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目の前のマシュマロを、15分間食べずに我慢できるか?
子供の我慢強さを測るこのテストで、将来の成績の良し悪しや、社会的に成功するか否かを高い確率で予測できるというのは前回のコラム「人生の成功を導く子どもの資質」に書いた通りです。
「自制心」すなわち我慢強さは、人生においてもっとも大切な力です。
IQよりも成績に与える影響が大きいということが、科学的な実験により証明されています。
そして、この力は体力と同じように、使えば消耗して弱くなり、適切なトレーニングを積めば強く育てることができることもまた、実験により確認されています。
だから私達は、生徒やお父さんお母さんがイメージしやすいように、この自制心のことを「心の体力」と呼んでいます。
では、「心の体力」はどのようなときに使うのでしょうか?
日常生活の中の使い道として覚えておかなければいけないものが、主に4つ挙げられます
1.行動をコントロールする
2.感情をコントロールする
3.欲求をコントロールする
4.決断を下す
この4つです。そして、これらによって「心の体力」を使い消耗すると、これらのことができなくなっていきます。
例えば、怒りの感情を抑え続けると、だんだん「心の体力」を消耗していき、怒りを抑えられなくなってしまい爆発します。
さらに悪いことに、心の体力の源は1つなので、上にあるどれかの理由によって「心の体力」を消耗すると、他のこともできなくなってしまいます。
水泳をして体力を使った後は、マラソンをしようと思っても疲れていて思うように走れないでしょう。
それと同じように、怒りの感情を抑えることに疲れている状態では、甘いものが食べたいというような欲求を抑えて我慢することができなくなってしまいます。
1つがうまくいかないと、あらゆる点に悪影響が出るのです。
そこで今回は、「心の体力」の無駄な消耗を抑えるにはどうすれば良いかがテーマです。
上記の4つについて、1つずつ具体的に見ていきましょう。
1:行動をコントロールする
そのときに取り組んでいる作業にエネルギーを集中させ、適正なスピードと正確さの組み合わせを探って時間を管理し、作業をやめたいと思ってもやり通すこと。
要するに仕事や勉強を頑張るということです。
仕事や勉強を頑張っていれば、段々「心の体力」が消耗し、疲れてくるのです。
その結果徐々に適正なスピードが維持できず、効率が落ちてきます。
また、正確性が維持できず、ミスが増えたりします。
これは仕方のないことです。
勘違いしている方が多いのですが、やる気があっても好きなことであっても、疲れるものは疲れます。
ただ、多少疲れにくいというだけです。
「やる気さえあればいくらでも勉強できるだろう、集中力が続かないのは甘えだ」と考えるのは、「ダイエットしたいと思っているなら5kmでも10kmでも走れるだろう、それができないのは甘えだ」と考えるのに等しいと思ってください。
心の体力も体の体力も、やる気とは別のものとして存在しているのです。
だから、この行動のコントロールに「心の体力」を注ぎ込むために、その他の理由で無駄遣いすることがないようにしなければいけないのです。
2:感情をコントロールする
年末に毎年放送される「笑ってはいけない○○」というシリーズのテレビ番組をご存知じでしょうか?
ダウンタウンやココリコが、笑いの刺客たちのお笑い攻撃を受けながら、笑うのを必死に我慢するという企画です。
笑ってしまうと痛いお仕置きを受けるので、みんな必死に我慢します。
その結果、精神的にどんどん疲弊していくのが見ていてよくわかります。
感情というものは自然に湧きあがるもので、それを無理矢理コントロールするのには大きなエネルギーが必要です。
皆さんも、笑ってはいけない会議の場や葬祭の場で、昔の面白かった思い出が不意に思い出され、笑いをこらえるのに難儀した経験はありませんか?
このような感情のコントロールが与える影響を示す実験がアメリカで行われました。
実験の方法はこうです。
——
被験者にハンドグリップを握らせて、握っていられる時間を計測する体力テストを受けさせます。
疲れて手を離したくなっても握れという信号を筋肉に送り続けるには、我慢強さ=「心の体力」が必要とされます。
まず、何もしていない状態で、個々の被験者の基準値を最初に測ります。
次に、核廃棄物が野生生物に与える影響を描いたドキュメンタリーを見せます。
放射能の影響により方向感覚を失ったウミガメが、海に戻れずに陸地にどんどん入り込んでしまい、やがて衰弱して死に至る。
その姿は、見ていて涙を禁じえないものとなっています。
これを見る際に、あるグループには、感情を抑えて表に出さないように指示しました。
悲しい表情をしてはいけません。涙を流してもいけません。
また、別のあるグループには、大げさに悲しむように指示をしました。
わざと悲しみを大きく表現し、泣いてみせたりするのです。
そして、比較対照とするためのグループには、特に指示を出さず普通に見てもらいました。
その後、再度ハンドグリップを握らせて、握っていられる時間を計測しました。
——
結果は、普通に見たグループは影響がなかったのに対し、感情を抑えたグループと感情を大げさに表現したグループは、ハンドグリップを握っていられる時間が大幅に減少しました。
「悲しい」という感情が心の体力を削るのではありません。
その感情をコントロールしようとすることが心の体力を削るのです。
皆さんも、嫌なやつに嫌なことを言われて頭にきたが、それを表に出せずに抑えたときや、誰かの機嫌をとるために楽しくもないのに楽しいふりをしたときなど、どっと疲れた経験がありますよね?
そんなときにはきっと勉強や仕事が手につかなかったはずです。
それは心の体力が削られたから。
人間とはそういう風にできているのです。
このことから得られる教訓。
それは、子供を勉強に集中させるためには、気分よく向かわせることが大切という当たり前のことです。
子供がなかなか勉強を始めないとき、勉強していても集中していないとき、叱ったりしていませんか?
99%の確率で、その行為は逆効果です。
小学校4年生以上になると、普通は親の言うことには内容の如何に関わらず不快感を感じるようになります。
残りの1%、叱られて「わかったよママ!」と素直に従うような子は、精神面での成長が遅いので逆に心配した方が良いくらいです。
叱られる→不快になるが、それを表に出すと余計怒られるので抑える→心の体力を消耗→勉強に集中できない
これが自然な流れです。
叱れば叱るほど、子供の勉強に使うべき心の体力を、自分自身の手で削り取っているということを知っておいて下さい。
実際に伸学会でも、この話をセミナーでしたあと、「家で勉強のことについて声かけするのをやめたら自分から勉強するようになって驚いている」という趣旨の報告をたくさんいただきました。
ご許可をいただいたものを一部ご紹介します。
先日は大変ためになるお話をありがとうございました。
お話で、勉強しなさい!という必要のない事を教えて頂き、まず第一に私の心が楽になりました。
今まで勉強は促さないとやらないと思っていたので、実際に私から言わなくしてみると、どうなるのかなー??と不安でした。
しかし、なんと自分から計画を立ててやっている様なのです。
こちらの関わり方を変えただけで、子供もストレスがないし、私もイライラせずに子供と関われるようになり、大変ハッピーな日々です。
ありがとうございました!
あっっまだ2日ですが。。(^_^;)
その後もちゃんと継続できているそうです。
何も言わないと勉強しないかもしれませんが、勉強するかもしれません。
言えば勉強しないか、しても集中できず身にならないかのどちらかです。
どちらを選んだ方が得策かは言うまでもありませんね。
成績が良い子はだいたい「親から勉強しろと言われたことが無い」と言います。
それは、「成績が良いから親から何も言われない」のではなく、「何も言われないから成績が良くなる」のです。
その理由が、この実験から見えてきます。
もし何か声かけをするのであれば、叱ったり否定的なことを言うのではなく、肯定的な声かけをするようにしましょう。
最後に、子供の勉強とは関係無いことですが、「心の体力」の話は大人にも共通することです。
「行動」で疲れていると「感情のコントロール」ができなくなり、「感情」で疲れていると「行動のコントロール」ができなくなります。
ですから、仕事で疲れている人は怒りっぽくなったり、あるいはプライベートで悩みを抱えている人は仕事が手につかなくなったりします。
その人の性格ややる気の問題ではありません。
人間とはそういうものなのです。
そのことを知っていると、解決策も見えてきますね。
それでは、長くなりましたので、今回はこのあたりで。
続きはまた来週、「『心の体力』は何をすると消耗するか2」です。
今回書けなかった「欲求をコントロールする」と「決断を下す」について書きます。
楽しみにしていて下さいね。
文責:伸学会代表 菊池洋匡
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