脳を鍛えるのはブロック学習?ランダム学習?

中学受験本番では「この問題はつるかめ算ですよ」なんてことはどこにも書いていません。

ですから、「そもそもこの問題は何なのか?」ということを見破る力が必要になります。

これは国語の試験ではよりいっそう必要になります。

カリキュラムテストやマンスリーはできるのに、公開模試やサピックスオープンになると成績が下がったりしていませんか?

それはこの「見破る力」の不足が原因です。

そしてそういう子は入試では不合格になってしまいます。

 

もちろんそんなことはわかっているでしょうから、悩んで塾の先生に相談するのでしょうが、多くの場合返ってくるのは「カリテでちゃんと成績を取っていれば公開模試の成績も伸びてきます」みたいな返事ばかりです。

中には待っていれば伸びてくる子もいるのですが、しかし残念ながら多くの場合はそうはなりません。

ほとんどの子はいつまで経っても成績が上がらず、6年後半になるとむしろ下がり続けます。

なぜなら成績が上がらないのは勉強のやり方が間違っているためだからです。

その間違いが直らない限り力はつきません。

 

多くの子は、単に繰り返しやれば力がつくと思っています。

確かに学習の基本は反復練習です。それは間違いありません。

しかし、実は反復のやり方によって、成果には大きな差ができるのです。

それを示す実験に、例えばこんなものがあります。

2007年、サウスフロリダ大学のケリー・テイラーは、24人の小学4年生(男子女子それぞれ12人ずつ)を対象に、算数を教える実験を行いました。
ランダム算数
図のような角柱の面・辺・頂点・角の数を求める計算方法を教えます。

そして、練習として4種類各8問ずつ、合計24問の問題を解かせます。

その際に、24人を2つのグループに分け、問題を解く順序を少し変えさせます。

半分の生徒には、面・面・面・・・・、辺・辺・辺・・・、のように同じ種類のブロックごとに解かせました。

残りの半分の生徒には、面・角・頂点・面・辺・角・・・、のようにランダムな順序で解かせました。

まったく同じことを教え、まったく同じ問題を、全く同じ数だけ解かせました。

違いはただ1つ、解く順序だけです。

翌日、子供たちに4種類全ての問題を1問ずつ出題するテストをしました。

その結果2つのグループの成績には顕著な差が表れました。

ブロック学習をしたグループの正解率は38%だったのに対し、ランダム学習をしたグループの正解率は77%だったのです。

問題演習の順序を変えるだけで、成績に大きな差が生まれるのです。

(参照)Kelli Taylor andDoug Rohrer, “The Effects of Interleaved PracticeApplied Cognitive Psychology 24(6):837 – 848 · September 2010

この学習法の違いは、算数だけではなく英語・国語・理科・社会、果ては美術・音楽・体育まで全てにあてはまります。

例えば、美術においてはこんな実験が行われました。

ウィリアムズカレッジの認知心理学者ネイト・コーネルは、12人の風景画家による絵画を6作ずつ計72枚を使って、作者を判別する「目利き力」を鍛える学習の実験を行いました。

その際に、風景画家を6人ずつに分け、先ほどの角柱の問題と同じように、学習する順序に違いを作りました。

そして、学習には使わなかった同じ作者のほかの絵画48作を使って、12人の中から作者を答えさせるテストを行いました。

見たことのない絵ばかりなので、その画家の描き方の「スタイル」がわからなければ答えられないテストです。

結果は、ブロック学習で学んだ6人の画家の絵画は正答率が50%だったのに対して、ランダム学習で学んだ6人の画家の絵画は正答率が65%でした。

(参照)Nate Kornell and Robert A. Bjork, “Learning Concepts and Categories:Is Spacing the ‘Enemy of Induction’?Psychological Science 19(6):585-92 · July 2008

同じ被験者たちが、学習法を変えただけで正答率にはっきり差が出ました。

角柱の問題と同様に、絵画の学習でもランダム学習の方が高い成績を出したのです。

 

さらに驚くべきことですが、この実験の後に被験者に行ったアンケートで、78%の被験者、つまりおよそ5人に4人が、なんと50%しか正解できなかったブロック学習の方が「良かった」と回答しています。

恐ろしいことに、実際には力がついていない学習法の方が、本人たちの体感としては「わかりやすかった」と感じているのです。

世の多くの人間が、自分は成長していると信じながら、実際には成長が遅い学習法を実践しているであろうことを示していると思います。

あなたのお子さんは大丈夫ですか?

正しい学習法を感じ取れる5人に1人になれていますか?

 

学習には正しいやり方があります。

それは知っていれば誰でも実践できる技術です。

だから、ぜひお子さんには正しい学習法を教えてあげて下さいね。

 

文責:伸学会代表 菊池洋匡

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