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中学受験の大変な勉強をやり遂げて目標を達成する意思の強さを持たせるためには、自分に厳しくさせなければいけないとあなたは思っていませんか?
私はそう思っていました。
しかし、実はそれは間違いでした。
近年の数々の心理学の研究で、自分を責めることは常にやる気や自制心の低下を招くことが明らかになっています。
一方、「自分への思いやり」=「自分を励まし、自分に優しくすること」は、やる気の向上や自制心の強化につながります。
そのことを示す、カナダのオタワにあるカールトン大学で1年生119人を対象に行われた調査があります。
この調査では、学生達が試験勉強を怠けて先延ばしにする様子を学期の最初から最後まで記録しました。
最初の試験では、多くの学生がギリギリまで勉強を始めませんでした。
その後、この失敗をふまえて、学生達は学習の習慣をどう改善しようとするかを観察しました。
その結果、最初の試験で直前まで勉強しなかったことに対して自分を許した学生達ほど、その後の試験では準備を怠けることが減りました。
逆に、最初の試験の準備に失敗したことで自分を責めた学生ほど、次の試験ではさらにのんびりしてしまったのです。
(Michael J.A., Timothy A.Pychyl., Shannon H.Bennett. “I forgive myself, now I can study: How self-forgiveness for procrastinating can reduce future procrastination.” Personality and Individual Differences Volume 48(2010):803-808)
この結果は、私達が考えてきたことに反していませんか?
あなたもきっと、自分への思いやりなんて言っていたら子供は自分を甘やかす一方で、子供が正しく自己コントロールをできるように育てるためには自分に厳しくさせなければいけないと考えていたことでしょう。
それにもかかわらずこれはいったいどういうことなのでしょうか。
驚いたことに、罪悪感を抱くよりも、自分を許すほうが責任感が増すのです。
研究者達の発表によれば、失敗したことについて自分に思いやりをもってふり返った場合の方が、自分を厳しく批判した場合よりも、失敗したのは自分のせいだったのだと認めやすくなるそうです。
また、その方が他人の意見やアドバイスに対しても進んで耳を貸せるようになり、失敗の経験から学ぶことも多くなるそうです。
だとすれば、まずは相手の罪悪感を取り除いてあげることが、その子が成長するためには必要だということになります。
そこで注目したいのが、アメリカのルイジアナ州立大学のクレア・アダムズと、デューク大学のマーク・リアリーというふたりの心理学者が行った次の実験です。
この実験では、他人からのなぐさめの言葉があると、強い意志を取り戻し、適切な行動がとれるようになることがわかりました。
実験のやり方はこうです。
まず、体重に気をつけている若い女性達を研究室に集め、食べ物が気分に与える影響を調べるという名目でドーナツを食べさせました。
さらに、水を一杯飲み干させて満腹感を与え、お腹一杯に食べてしまったと感じさせ、罪悪感を煽りました。
それから、女性たちに調査用紙を配り、どんな気分になったかを記入してもらいました。
ここからが本番です。
次に、今度はお菓子の試食という名目で、数種類のお菓子を食べてもらいました。
実際には、「試食に協力する」という言い訳ができる状況の中で、被験者がどの程度意志の力を発揮して少ない量で我慢できるかを実験者達は観察しています。
ドーナツをお腹一杯食べてしまったことに罪悪感を感じていたら、きっと食べ過ぎてしまうに違いありません。
このとき、実験の担当者達は、半数の女性には「ドーナツを食べることに対して罪悪感を覚える方がいらっしゃるのですが、自分を責めないでくださいね。この研究ではみんながドーナツをたべています。これくらい食べたって悪いことだと感じる必要はないと思いますよ。」となぐさめていました。
残りの半数の女性達には、とくに何の言葉もかけませんでした。
そして試食という名の実験が終わった後、実験担当者はお菓子を入れていたボウルの重さを量り、各参加者が食べてお菓子がどれだけ減ったかを計算しました。
すると、自分を許せるようになぐさめてもらえなかった女性達は70グラム近くも食べていたのに対し、温かいなぐさめの言葉をかけられた女性達が食べたお菓子の量はわずか28グラムになったのです!
(チロルチョコが1つ7グラムくらいです)
(CLAIRE E. ADAMS, MARK R. LEARY. “PROMOTING SELF–COMPASSIONATE ATTITUDES TOWARD EATING AMONG RESTRICTIVE AND GUILTY EATERS.” Journal of Social and Clinical Psychology Volume 26(2007):1120–1144)
この論文を見て、私はとても驚きました。
罪悪感は自分の過ちを正すのに役に立つと思っていましたが、実際には罪悪感を取り除いてあげる方が良かったのです。
受験勉強を通じて、子供達はそれぞれ、大小たくさんの目標にチャレンジします。
そして、それを達成できない日も度々あるでしょう。
そのときに、あなたは子供になんと声かけをしますか?
文責:伸学会代表 菊池洋匡
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参考:ケリー・マクゴニガル著 『スタンフォードの自分を変える教室』大和書房 2012年