自己選択がやる気を引き出す

こんにちは。伸学会の菊池です。

少し前にこんなことがありました。

5年生のあるクラスの生徒数名が、1週間の算数の勉強のリズムがうまく作れずにやる気をなくしかけていたのです。

そこで、クラスのみんなで相談して授業と宿題の内容を変更しました。

といっても、1週間でやらなければならない内容は決まっているので、大きく変えることはできません。

週2回の算数の授業と宿題で扱う内容の配置を変えて整理しただけです。

私から見るとほとんど違いはありません。

むしろ、彼らの要望を聞いていったら、簡単な計算系の課題を減らして応用系の課題を追加することになったので、どちらかといえば大変になったように思えました。

しかし、私の狙い通り、結果としてクラスみんなのやる気が上がって、宿題の達成度は良くなりました。

なぜこのような生徒のマネジメントができたのか?

その秘訣についてお話ししたいと思います。

 

人はどのようなときに幸せを感じるのかわかりますか?

はるか昔から追い求められてきた問題ですが、いまだに明確な答えはありません。

しかし、多くの人が同意する、いくつかの基本的な欲求というものはあります。

「自律性」の欲求はその中の1つです。

人は自らの行動を選び、主体的に行動するときに幸せを感じるというものです。

 

誰かに強制されて行動をするのは、勉強だろうと仕事だろうと面白くないというのは納得できますよね?

私の個人的な経験でも、中高時代の英語や数学といった決められた勉強は、それはもう苦痛なものでした。

しかし今、それよりややこしい会社の会計や税金の勉強、広告の作り方の勉強などを楽しくやっています。

また、あれほど作文やレポートが嫌いだったのに、こんなに毎日のようにブログやらコラムやらを楽しんで書くようになるとは、自分でも信じられません。

このような経験は、当然ですが私1人だけのことではありません。

ちょっと面白い調査では、以前アメリカの最大手企業数社の自動車リースプログラムを管理する、保有台数10万台を超える大手の会社が行ったものがあります。

リース終了後の車両を高値で再販できるようなよい状態に保ち、企業が維持管理費を抑えるための方法を見つけることを目的とした調査です。

その結果、その車を運転する社員に選択権を1つ与えれば、維持管理費を大幅に(10%以上も!)削減できるとわかりました。

どんな選択権を与えれば良いか、あなたはわかりますか?

オーディオか、メーカーか、リース契約満了時に引き続き同じ車に乗るか買い取るかの選択権をあたえるか・・・

どれもその答えではありませんでした。

正解は





“色”でした。

社員が自分の運転する車の色を選べるようにすると、リースの担当者や購買かに押し付けられた色の車に乗る場合より、経費を大幅に抑えることができたのです。

社員が色を選択すると、その車は「私の」社用車になり、購買担当者やリース責任者が色を指定すると、「彼らの」社用車になったのです。

私が他人に決められた勉強を自分のこととして受け止められず、意欲がわかなかったのと同じですね。

自分で選択すると、その結果そのことに対して「当事者意識」が生まれるのです。

あなたにも同じような心当たりがあると思うのですが、いったいどんなことが思い浮かぶでしょうか?

 

それを考えると、「自律性」は、私達が考えている以上に、私達のやる気や楽しさや幸福感と強く結びついていることがわかっていただけると思います。

子供たちの指導においても、自律性の欲求が満たされれば、彼らは学ぶことが好きになり、より多くを学ぶようになります。

逆に、自律性の欲求が妨げられると、学ぶ意欲を低下させてしまいます。

だから、元々学ぶことが好きな生徒に対しては、必要以上に管理されていると感じさせることは避けなければいけません。

大雑把に言って偏差値が高い学校ほど自由度が高いのはそういうことなのです。

 

さて、問題は、学ぶことが好きではない子供たちの場合です。

彼らに自由に行動を選択をさせたところを想像してみて下さい。

選ぶのはテレビ・Youtube・ゲーム・マンガ・・・・・・おお、頭を抱えるあなたの姿が目に浮かぶようです。

「自分でやるから放っておいて!」の言葉を信じて裏切られたことは何回くらいありますか?

裏切り続けた私は、母に回数を尋ねることは恐ろしくてできませんが。。。

だから生徒にもあまり胸を張って叱れません(苦笑)

でもだからといって「勉強しない」という選択肢は許すことはできないわけです。

ではどうすれば良いのでしょう?

 

そこで有効なのが、選択の「感覚」を与えることです。

参考になるのが、イェール大学の心理学者ダイアナ・コルドヴァとスタンフォード大学の心理学者マーク・レッパーの行った子供の選択の感覚に関する実験です。
(Diana I. Cordova and Mark R. Lepper, “Intrinsic Motivation and the Process of Learning: Beneficial Effects ofContextualization, Personalization, and Choice” Journal of Educational Psychology 1996, Vol. 88, No. 4, 715-730)

コルドヴァらは、72人の小学校4~5年生の生徒たちに、SFをテーマにしたパソコン用の算数学習ゲームを与えました。

このゲームは計算式を解く順序を学ぶためのものです。

 

このゲームでは、子供は学習内容自体は自分で選ぶことはできません。

ただし、一部の生徒にだけ、学習とは無関係な部分を選択できるようにしました。

自分を表すアイコンを4つの中から選び、宇宙船に好きな名前をつけられるようにしたのです。

他の子供もまったく同じゲームを行いますが、アイコンや宇宙船の名前はコンピューターが自動的に決定します。

実験の結果、宇宙船の名前やアイコンを選択できた生徒の方が、ゲームを楽しみ、休み時間にもプレーを続ける傾向を示しました。

それだけでなく、その後の算数のテストでも良い成績を修めました。

子供達は学習した内容をよく理解できたと答え、より難易度の高いゲームをしたいとも言いました。

選択対象が学習内容とは無関係であっても、選択の「感覚」を与えるだけで、自律性の欲求が満たされ、意欲が高まり、大きな成果に結びつくことがあるのです。

 

私達はこういったことを知っているので、子供たちにできる限り選択の機会を与えるようにしています。

例えば、全員共通の宿題は少なめにし、テストに向けた各自の課題を自分で考えて「やることリスト」を作らせるようにしています。

 

最初にあげた生徒の宿題のマネジメントも、「何をやるか」は大きくは変えられないので、「いつやるか」を選択させました。

それにより子供たちの自律性の欲求は満たされ、やる気が湧いたのです。

 

他にも、こちらからの働きかけではないですが、自分で勉強道具を選ぶことで意欲を感じている子もいます。

例えば、文房具が好きな子っていますよね。

伸学会にもいます。科目ごとにペンの種類や色にこだわりがあるそうです。

そういったものも、アイコンや宇宙船の名前を選ぶのと同じで、自律性の欲求を満たすことに繋がり意欲になっていると考えられます。

そういえば私も、ジョギング用のシューズを買ったらやる気がわいてきたことがあります(^^)

これは意欲を感じていない子への意図的な働きかけとしても、活用できそうですよね。

ほかには、子供の意欲を引き出すためにいったいどんな方法が考えられるでしょうか?

 

「あれやれ!これやれ!」という指示をできる限り減らし、子供に自分で選んだように感じさせる「演出」をいろいろと考えてみましょう。

そうすれば、子供の意欲をうまく引き出せますよ。

本人に無理やり「YES」と言わせるのは選択させたとこにはならないので、その点にはくれぐれもご注意を。。。

 

文責:伸学会代表 菊池洋匡

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参考文献
ハイディ・グラント・ハルバーソン『やってのける――意志力を使わずに自分を動かす』大和書房、2013年
チャールズ・A・クーンラット『スコアをつければ組織は動く』ダイレクト出版、2017年