なぜ少年院で働く児童精神科医はパズルを作ったのか? 

こんにちは。伸学会の菊池です。

今日ヤフーニュースを見ていたら、
東洋経済オンラインに興味深い記事がアップされていました。

以前メルマガでもYoutubeでも紹介した、
「ケーキの切れない非行少年たち」
https://amzn.to/34kq6GL
の著者の宮口さんが書いた記事です。

この本は衝撃的な表紙で、
思わず「ジャケ買い」をしてしまいました。

「ケーキの切れない非行少年たち」
の内容を簡単に説明すると、
非行に走り少年院に入ってしまう少年少女の多くは、
「認知的能力」が低いことで勉強についていけず、
いじめの被害や虐待にあった経験が多いそうです。

その子たちの更生のための教育が
伸学会の理念とか目指すものと共通する部分があるなと思ったので、
以前スタッフ間でシェアするために感想を社内SNSに投稿しました。

そして、
多くの保護者にも知っておいてほしい内容なので、
メルマガ・Youtubeでも扱いました。


非行少年・少女たちの多くは、認知能力に軽度の障害をかかえていて、
軽度であるが故にそれを見過ごされ、
「できない」「やらない」「やる気がない」と思われて、
親や学校に救われないまま、
必要な助けを得られずに来てしまっているそうです。

著者はこれを「教育の敗北」と表現していました。

そして、必要な発達の支援を受けられなかった少年たちは、
出所しても職場で仕事ができず、
ここでもまた「やる気がない」と判断され仕事を失い、
また犯罪に走るという悪循環に入っていきます。
これが大人になっても続いていきます。

(「ケーキの切れない非行少年たち」より引用)

本の表紙にある「3等分」もそうですが、
こちらの「図形を書き写す」もかなりの衝撃です。

上の図が下のように「見えている」のですよね。

そりゃ漢字も読めないし書けないし、
算数の図形問題なんか壊滅するでしょう。。。

「認知能力が低い人の見えている世界」は、
我々が見ている世界とは全く違うものなのでしょうね。

あなたのお子さんが見ている世界は
あなたに見えている世界と同じでしょうか?



伸学会の生徒の中でも、
基本的な認知能力が低めな子たちはたくさんいます。

もしそのまま一般的な塾に通ったら、
「できない」「やらない」「やる気がない」
と思われてしまうであろう子たちです。


そういった子たちに、
「パズル道場」のような認知能力を高めるためのトレーニングからやらせていくと、
算数や国語の土台ができるので授業が理解できるようになります。

ちなみに著者が少年院で少年たちにやらせている「コグトレ」というトレーニングは、
かなりパズル道場に近いです。

例えば「点描写」が入っていたりとか。

それにより、ちゃんと認知能力に改善が見られ、
例えば「見る力」が鍛えられた少年は、
漢字を覚えられるようになったりしているそうです。

今回の東洋経済の記事では、
そういった認知能力を高めるためのトレーニングについて紹介されていました。

—以下引用—
お子さんがまじめに勉強に取り組んでいるのに、「いまひとつテストの点につながらない」「授業についていけない」「不注意なことが多い」……そんな悩みをもつ親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
『医者が考案したコグトレ・パズル』の著者であり、医学博士、臨床心理士の宮口幸治氏によると、「認知機能を強化することで改善できる可能性がある」と言います。
子どもの認知機能の弱さに気づいた経緯とそれを強化する具体的なトレーニング方法について、聞いてみました。
(中略)
率直に言って、「この子たちには生きていくために必要な『学力以前の力』が備わっていない」と感じました。

これは非行少年だけに限った話ではありません。私は現在、幼稚園や小・中学校で教育相談も受けています。そこで出会う子どもたちの相談は、発達や学習の遅れに関するものが多く、その状況は非行少年たちの学校時代の様子ととてもよく似ているのです。

また教育相談の場を通じて、お子さんの知能検査などを行うこともあります。その際に、子どもの「見る・聞く」といった認知機能に弱さが見つかれば、それが学業不振につながっている可能性を保護者の方に説明してきました。

すると、保護者の方の多くは、「それじゃあ、この子が授業中にぼんやりしていたり勉強が苦手なのは、ふざけていたりなまけたりしているせいではないのですね」と納得がいった様子を見せます。なかには、それまでの子どものつらさに思いをはせてか涙を流される方もいます。

そのあとは、決まって保護者の方からこんな質問を受けました。
「認知機能に弱さがあるのは、どうしたらいいですか?」

しかし、そう尋ねられても、以前は、なかなかいいトレーニングを紹介できずにもどかしい思いを抱えていました。当時、書店に行くと「見る・聞く力を育てる」という書籍もありましたが、効果検証が不足していたり、包括的に力をつけさせるものではなかったり……。

そこで、私自身が約5年間にわたり医療少年院でトレーニングを実施し、少年たちに対して手応えの得られた認知機能強化トレーニングを「コグトレ」として提供するようになったのです。

コグトレとは、「認知○○トレーニング(Cognitive ◯◯ Training)」の略称です。○○には「ソーシャル(社会面)」「機能強化(学習面)」「作業(身体面)」が入ります。

認知機能には、「記憶」「言語理解」「注意」「知覚」「推論・判断」という5つの要素が含まれます(下図)。その5つの要素に対応する「覚える」「数える」「写す」「見つける」「想像する」力を伸ばすことが、コグトレの目的です。
「少年院で働く児童精神科医がパズルを作った訳」
https://toyokeizai.net/articles/-/369106 より引用


興味がありましたら、
ぜひリンク先から全文を読んでみてください。


私は伸学会の在り方として、
必ずしも中学受験のトップレベルの難関校合格を目指すような指導だけではなく、
1人1人の健全な発達を支援するという役割も果たしていきたいと思っています。

「教育の敗北」を勝利に変える役割を果たしていきたいと考えています。

そのための方法として、
こういった「勉強が苦手な子」に必要なトレーニングは何なのか、
これからも情報を発信していきたいと思います。


そして、もう1つ、
教育の敗北を勝利に変えるための方法として、
子供の認知的能力を鍛える以外にも大事なポイントがあります。

それは、勉強が苦手な子たちが
「つらい思い」をしないように守ることです。

最初にお伝えしたように、
非行に走る子たちの共通点として、
軽度の知的障害があるとともに、
虐待やいじめを受けた経験があるそうです。

勉強が「人並みに」できないことを、
やる気がないからだと責められたりする場合もあれば、
できないことを同級生に馬鹿にされ、
いじめられるような場合もあります。


前者のようなケースを無くすために、
「能力の不足」を「やる気のなさ」といった
悪意でとらえないようにしてあげてほしいなと思います。

これは伸学会の親ゼミでも、
くり返し保護者の心構えとして伝えていることです。

ちょうど昨日公開したYoutubeでもそのことを話しました。

・子どもが素直に言うことを聞かないのは「やりたくてもできない」のかもしれません
https://youtu.be/guXYGQx-lIk


そして、後者のようなケースも、
その子に合った課題をやることが大切であること、
他の子より早いか遅いかではなくその子なりのペースで成長していくことが大事であるということを、
家庭の文化として子供たちの意識に浸透させていくことで、
防いでほしいなと思っています。

それがあなたのお子さん自身を守ることにもなりますし、
周囲の子たちを守ることにもつながります。


そのためには、その意義を理解させてあげることが重要です。

「そう決まっているから」では、
「家の中以外のところでは関係ない」になってしまいます。


子供を幸せにするための「教育」が、
それについていけなかった子たちを非行に走らせては本末転倒ですよね。

お子さんの教育を通じて、
全ての子が学び成長できる世の中を、
私たちと一緒に作っていきましょう。


・子どもが素直に言うことを聞かないのは「やりたくてもできない」のかもしれません


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