コスパの良い解き直しのやり方・タイミングとは?


こんばんは。伸学会の菊池です。

少し前の記事で、「これから中学受験の勉強を始めるお子さんに、まず教えてあげたい3つの学習ステップ」として、

① 問題を解く
② ポイント発見(正しい答えややり方を確認する)
③ リトライ(もう一度やり直す)

という流れをご紹介しました。
この3ステップをきちんと回せるようになると、成績の伸び方が一段と加速します。

今回はこの中でも「リトライ」=解き直しを、もっと効果的にするためのやり方とタイミングについて詳しくお話ししていきます。


① コスパの良いリトライのやり方
まず、リトライの「やり方」についてです。
多くの子が、「間違えた問題だけもう一度やってみよう」としますよね。

合っていたものはもう一度やったってできるのが当たり前ですし、そんなの無駄だと感じるんじゃないでしょうか。
その気持ちはよくわかります。
しかし、実は合っていたものも含めて全問リトライをした方が、かけた時間や手間に対しての成長が大きく、コスパが良いことが実験でわかっているんです。

間違いだけをリトライしている子は、要領よくうまく勉強しているつもりでいると思いますが、実は大損しているんですね。
そのことを示す実験が、パデュー大学のカーピック博士が行った研究です。

カーピック博士は、ワシントン大学の学生たちにスワヒリ語の単語(40個)を覚えてもらう課題を出し、次の4パターンに分けて学習させました。

グループA 覚え直し(ポ発):全て / 再テスト(リトライ):全て
グループB 覚え直し(ポ発):間違えたものだけ / 再テスト(リトライ):全て
グループC 覚え直し(ポ発):全て / 再テスト(リトライ):間違えたものだけ
グループD 覚え直し(ポ発)間違えたものだけ / 再テスト(リトライ):間違えたものだけ

どのグループも、最終的には全問正解できるまで繰り返しました。
一見すると、時間が短くて済みそうなDグループが効率良さそうに思えますよね。
実際に、すべて覚えるのにかかった時間が、Aグループを100とすると、B・Cは75くらい、Dは50くらいだったそうです。
Dグループが一番短い時間ですべてを覚えきったので、うまくやったように見えますね。

ところが!
1週間後に抜き打ちテストを行った結果、驚きの差が出ました。

グループA(全て覚え直し&全て再テスト):平均約32問正解
グループD(間違えたものだけ覚え直し&再テスト):平均約14問正解

つまり、Aグループは、記憶の保持率が2倍以上だったんです。
Dグループは、かかった時間が半分にはなりましたが、覚えている量が半分よりも少なくなっているので、これだと損をしているのがわかるのではないでしょうか。

さらに面白いのは、グループC(全て覚え直し&間違えだけ再テスト)とグループB(間違えだけ覚え直し&全問リトライ)の結果です。

実は、AとBの成績はほとんど変わらず、CとDの成績もほぼ同じだったのです。

つまり、覚え直しは合っていたものはやらなくても点数が下がらないので、やらない方が効率が良いが、再テストはやらないと点数が大幅に下がるのでやらないと損ということです。

Bグループはかかった時間75に対して、平均約32問の正解。
それに対してDグループはかかった時間50に対して、平均約14問の正解です。
かかる時間は3分の2くらいにしか短縮できないのに、点数が半分以下に落ちる、そんな勉強をしていたら馬鹿らしいなと思いませんか?

では、なぜ「全問リトライ」が効くのでしょうか?
この結果からわかるのは、
・人は「覚えること」より「思い出すこと」で記憶を定着させる
・「テストする」=「アウトプットする」ことが最大の記憶強化法
ということです。

この現象は「テスト効果(testing effect)」と呼ばれていて、最強の記憶術の1つです。

つまり、全問リトライは「忘れているところを探すため」ではなく、「記憶を脳に定着させるため」に行うものなんですね。

こうしたことも、知らないと「めんどくさい」「無駄だ」「やりたくない」ってなってしまいますよね。
それは普通の反応です。
だから伸学会では、ホームルームという授業の中で実際に実験をして比較してみて、「確かにリトライした方が点数が伸びる!」ということを体験してもらっています。

そうすると、やらなきゃもったいない!って子どもたちも思ってくれるんですよね。

もちろん、やった方が良いと思っていても、ゲームをやっていてリトライをやる時間が無くなっちゃった、なんてことはあるあるですけど(笑)
でも、「無駄だよ。なんでもう一度やらなきゃいけないんだよ。」と思っているのと、「成績を上げるためにはやらなきゃ損だ」と思っているのとでは、実行できる確率が全然変わってくるんです。


② コスパの良いリトライのタイミング
では、このリトライは、いつやるのがより効率が良いのでしょうか?
実はリトライは、やるタイミングによって学習効果が大きく変わります。

ここで覚えておいてほしいのが、分散効果(spacing effect)です。
この分散効果も様々な実験で確認されている強力な学習法です。

実験のパターンは様々あるのですが、一貫して言えるのは、リトライは時間を空けて行った方が記憶に定着するということ。
短期集中で一気に覚えたものは、すぐに忘れてしまうんですね。

では、どれくらい間を空けたら良いかですが、あまり空けすぎるとすっかり忘れてしまって、覚え直すのが大変になります。
もちろんその大変な作業をやり切れば大変な力になるのですが、忙しい受験生がそんな大変な作業をやるのは現実的ではありません。
ちょうどバランスがいいのが「忘れかけたタイミングで行う」ということです。

おすすめのリトライスケジュールは、
1回目:10分後(軽い確認)
2回目:1日後(ちょっと記憶があやふやに)
3回目:1週間後(忘れかけてる)
4回目:1か月後(長期記憶へ)

この“忘却曲線”に逆らうように、少しずつ間隔を広げながらリトライすることで、定着率は飛躍的にアップします。

勉強初心者の子だと、この1回目を飛ばすせいで1日後にすっかり忘れてしまっているということも多いので要注意です。
伸学会ではこの1回目を「プチリト(プチリトライ)」と呼んで、生徒たちに大事さをアピールして、やるように促しています。

③ 慣れてきたら“カスタマイズ”!
さらに勉強することに慣れてきたら、自分の得意・不得意に合わせてリトライの間隔を調整できるようになると理想的です。

例えば、
暗記が得意な子なら
 →「2日後→2週間後→2か月後」くらいのゆったりサイクルでOK
記憶に不安がある科目なら
 →「翌日→3日後→1週間後」と細かく分けて繰り返すのがおすすめ
といった感じです。

同じ子でも、得意科目と不得意科目で、覚えていられる時間が全然違ったりしますよね。
自分の個性を把握して、「そろそろ忘れそうだな」という感覚を大事にできるようになると、“勉強の自立”に一歩近づきますよ。

伸学会の卒業生の中でも、こうしたカスタマイズについて教えたときに、ちゃんと試行錯誤して実践してくれた子たちは成績がぐんぐん上がっていきました。
お試しあれ。


ということで、今回のまとめ、リトライの極意についておさらいです。

・リトライは全問やるのがコスパ◎!
・思い出す練習=テスト効果で記憶がガッチリ定着!
・タイミングは“忘れかけ”がちょうどいい!
・慣れたら、自分に合ったリトライ間隔を見つけよう!

ということで、無駄な時間は減らしながらコスパの良い勉強時間の使い方をして、要領よく成績を上げていってくださいね。

それでは。

p.s.
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