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こんばんは。伸学会の菊池です。
同じ塾に通って、同じように授業を受けているのに、成績が良い子とそうでない子がいますよね。
わが子の成績がなかなか上がらないと、親御さんとしては焦るものだと思います。
特に、我が子は毎日机に向かっているのに、なぜか結果が伴わないという場合には、より悩みが深いのではないでしょうか。
勉強をしてないのなら、するようになればきっと成績が上がっていくはずという期待が持ちやすいです。(もちろんしてないことにイライラ・やきもきはするでしょうが!)
でも、頑張っているのに、成果が出せない。
そうなると、より一層悩みは深くなります。
どんな手を打ったら良いのか、困ってしまいますよね。
「うちの子は、もしかして頭が良くないのかな…」
そう感じてしまったことがある親御さんは、少なくないと思います。
あなたはいかがですか?
そんな悩みを抱える方へ、希望になるかもしれない研究に、先日参加してきました。
正に文字通り、「頭を良くする」ツールを開発しようという研究です。
その研究は、慶應大学新川崎タウンキャンパスの、牛山潤一研究室で行われています。
うちの学生講師の1人(大学院生)がそこに所属して研究をしていて、誘われて被験者の1人として参加してきたというわけです。

頭に脳波計測キャップをかぶって、PCで課題を解く。
見た目はなかなかシュールです。
ピースサインしながら「なんか宇宙人みたいだな」と思いつつ、頭の中はちゃんと課題に集中していました(たぶん)。
脳波は、脳内の電気的な活動をリアルタイムで記録するものです。
どこの部位が、どんな状態のときに活発に動いているか——それが数値とグラフで見えてくる。
普段は自分では気づけない、周囲の人からも見えない、「頭の中の状態」が、外から観測できるわけです。
研究者の院生くんがいろいろ説明してくれたのですが、正直、専門的な部分は私には難しくて……。
ただ、研究の方向性はシンプルに理解できました。
院生君の研究のテーマは、「学習能力が高い人と低い人で、脳の使い方がどう違うのか」をデータで可視化して解明することです。
いわゆる「頭が良い人」とそうではない人の違いは、脳そのものの性能の違いというよりも、脳の使い方の違いなのではないかと考えて、検証しているんだそうなんですね。
そして、この研究室ではもう1つ、「ニューロフィードバック」と呼ばれる技術の応用についても研究しています。
ニューロフィードバックとは、脳の状態、例えば「自分が今集中できているかどうか」を、音や映像でリアルタイムに知らせてくれる仕組みのことです。
私も体験してみましたが、
「集中できているときは静かで、集中が切れると雑音が流れてくる」
という仕組みになっていました。
自分の脳の状態が「見える(聞こえる)化」される体験は、なかなか面白いものでした。
そして、このフィードバックを繰り返すことで、「集中できている状態」を自分で意図的に作るコツがつかめるようになる——というのが、研究の先にある可能性です。
この技術と組み合わせることで、高い学習能力が発揮できる頭の使い方をしているときに、映像や音声でフィードバックをして、「今の頭の使い方良いよ!それを続けて!」と教えてあげることで、常時上手にその状態を維持できるようになるかもしれない。
つまり、「頭の使い方」は、現時点だと教えられないから変えられないもので、それは身長のような固定的な「才能」のようになってしまっているが、それを学習できる「スキル」にできるかもしれない。
それが、この研究の核心にある仮説です。
話を聞きながら、私はワクワクしていました。
私が伸学会をやっている理由のひとつは、子どもたちに「良い勉強のやり方」を身につけてほしいということです。
量だけこなす勉強ではなく、エビデンスに基づく効率の良い学習方法を教え、身につけさせていきたい。
例えば「解き直しのタイミング」1つ取ってみても、良いタイミングでやるかどうかで、覚えられる量が本当に倍以上変わったりするんです!
そういうものをしっかり教えることで、一人でも多くの子に「やり方次第で変わる」と知ってほしいと思っています。
だから、この研究が実を結んで、実用化されたら、うちの子たちにも使わせてあげたいな。
実用化以前に、実証実験があるなら、伸学会の生徒の中から希望者を募って協力したいな。
そう思いました。
そして、それは、伸学会の子どもたちだけに与えて、世間には秘密にしておきたい、というわけではありません。
社会的に価値のあるものは、できるだけ広く行き渡ってほしい。
伸学会生だけでなく、日本全国の子どもたちに届いてほしいと思いました。
でも——。
「もしその未来が本当に来たら、何が起きるんだろう」と考え始めたとき、ちょっと違う感覚が浮かんできました。
少し遠回りな話をさせてください。
教育格差の研究に、こんなデータがあります。
経済的に恵まれていない家庭の子どもたちでは、学力に対する遺伝の影響はほぼゼロに近く、家庭環境の影響が6~8割を占めているそうです。
ところが、経済的に恵まれた家庭では逆転します。
家庭環境の影響はほぼゼロになり、遺伝の影響が6~8割を占めるようになる。
これが示しているのは、
「環境が整えば整うほど、最後に残るのは生まれ持った才能の差になる」
ということです。
これは、教育の歴史とも重なります。
数百年前は、「教育を受けられるかどうか」が人の能力の差を大きく決めていました。
世界的に見れば、今もそういう国があるかもしれません。
でも今の日本では、教育を受ける権利は憲法で保障されている。
その結果、教育の有無ではなく、遺伝的な才能や資質の差が、能力を左右するようになってきた。
環境の平等化は、格差をなくしません。
格差の「原因」を変えるんです。
だとすれば、「脳の使い方」が解明されて、誰もが同じように習得できるようになったとき、何が起きるか。
今は「頭の使い方の差」が学力の差を生んでいるのかもしれません。
でもその差がなくなったとき——最後に残るのは、本当の意味での固定的な生まれ持った脳のスペックの違いだけになるかもしれません。
私がワクワクしながら「広めたい」と思っていたものが、結果的に「遺伝だけで順位が決まる社会」を加速させることになるかもしれない。
ユートピアを目指していたはずなのに、気づいたらディストピアに向かっていた——そんな可能性を感じて、なんとも言えない気持ちになりました。
もちろん、これは結論ではありません。
「頭の良さ」だけが人の価値を決めるわけでもないし、すぐに世界が変わるわけでもない。
いいのか悪いのか、正直よくわからない——それが今の正直な感想です。
ただ、1つ現時点で言えることがあります。
「環境が整うほど才能の差が出やすくなる」——裏を返せば、今この瞬間はまだ、「環境と取り組み方」で挽回できる余地が大きい時代だということです。
誰でも簡単に良い頭の使い方を身につけられるツールが無いからこそ、正しく試行錯誤しながら努力し、良い頭の使い方を身につけた子が伸びる。
そう思うと、今やっていることには意味があると感じます。
しっかり目の前の生徒たちの頭の良さを育てていけるように、これからも頑張っていこうと思いました。
そして、もう一つ大事なことがあると思っています。
他者と比較した順位を追いかけ続けるから、環境による差を無くしていっても、最後には遺伝の差が残り、結局他者比較の苦しさから逃れられないんですよね。
他の誰かより頭が良いかどうかではなく、自分が何を大切にして、どう生きるかを理解して実践できる人を育てること——そんな自分軸の幸せの手に入れ方を教えることが、教育の本質なのではないかとこの研究に参加して改めて感じました。
すぐに役に立つ結論のない話かもしれませんが、こういうことを保護者さんたちにも一緒に考えてもらえたら嬉しいです。
それでは。
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