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あなたは子育てでどんな悩みを抱えていますか?
私たちが入会面談のときに保護者の方の悩み事を聞いていると、頻出なものの1つが「子供が勉強嫌いで取り組んでくれない」というものです。
そして、ブログやFacebookページに載っている楽しそうな生徒たちの写真に惹かれて、ここでなら楽しく勉強してくれるんじゃないかと思って転塾を考えたと言われます。
「できるようにさせなければ」という親の焦りが行き過ぎてしまって、子供を勉強嫌いにしてしまう。
これってあるあるですよね?
確かに、ちゃんとやらせないと成長には繋がらない。
でも、ちゃんとやらせようとすると嫌いになってしまうかもしれない。
親としては、成長してほしいし、好きにもなってほしい。
「一体どっちを優先したら良いのだろう?」
結局のところ、その二者択一に迫られるのが、悩みの根源なのです。
そして、「成長」を選択すると、最初に書いたようなお悩みが起こることが多いわけです。
そこで、保護者の皆さんに伝えたいことがあります。
先ほどの「どっちを優先したら…」という問いへの科学的な研究が出した答え。
それは、「ちゃんとやらせるよりも、まずは楽しませることの方が大事」ということです。
ただ好きだからといって、上達できるわけではありません。
これまでのコラムやブログにも書いたように、自分の限界に挑む練習をしない限り、何事も上達はしないのです。
だから多くの人は、好きなことをやっていても全然うまくなりません。
それは確かにその通りです。
しかし、好きでもないことはなおさら上達できるはずありません。
研究をし、計画を立て、練習に励み、練習を振り返る。
上達をするためにはやらなければいけないことは山ほどあります。
好きでもないのに、それらを続けることができますか?
残念ながら、勉強でも習い事でも、最初の段階では子供はまだ「なにがなんでも成績をあげたい」とか「絶対にうまくなりたい」とかは思っていません。
何年も先を見据えて、将来の目標を考えていたりもしません。
ただひたすら楽しみたいだけです。
あのイチローだって、最初は気楽な初心者だったはずなのです。
だから、はじめのうちは無理をさせずに、興味を持ったことをひたすら楽しんで、どんどん興味がわくようにした方がよいのです。
心理学者のベンジャミン・ブルームは、科学・スポーツ・芸術などの分野において、世界で活躍する120人の人々と、その両親やコーチや教師たちにインタビューを行いました。
そういった研究により、学習の初期段階でもっとも望ましいのは、やさしくて面倒見のよい指導者を得ることだと明らかにしました。
そのような指導者たちの最大の特長は、最初の学びを楽しく、満足感の得られるものにしたことでした。
学習の初期段階では、基礎的なことはほとんど遊びを通して身につけます。
学ぶというよりも、ゲームのようなものです。
また、その段階では、ある程度の自主性が尊重されることも大切です。
勉強や習い事の学習者を対象に行った長期的研究によって、威圧的な両親や教師は、子供のやる気を台無しにしてしまうことがわかっています。
一方、自分の好きなことを選ばせてもらえた子供は、ますます興味を持って取り組み、のちに一生の仕事として打ち込む確率が高くなります。
スポーツ心理学者のジャン・コティも、初期段階でのびのびと遊びを通して興味を持ち、興味を深めておかないと、将来悲惨な結果を招く恐れがあることを突き止めました。
いきなり専門分野でみっちりトレーニングを受けた選手たちは、経験の浅い選手たちと競争した場合、最初のうちは明らかに有利です。
しかし、コティの研究では、そのような選手たちは負傷したり、燃え尽き症候群に陥ったりする確率が高いことがわかりました。
逆に、子供のころから様々なスポーツをためしたあとでひとつの競技に的を絞ったプロのアスリートたちは、全体的に長期間にわたって成績が良いこともまた明らかになりました。
早い時期に様々なスポーツに触れることで、自分がどのスポーツに向いているかがわかりやすくなるのです。
また、さまざまなスポーツを試すことで、クロストレーニングの良い機会となり、筋肉を鍛えスキルを身につけるのに役立ちます。
それがのちに自分の専門分野で集中トレーニングを行うときに土台となるのです。
これって成長の原理・原則ですから、いわゆる“勉強”においても同じことが言えると思っています。
低学年のうちからいきなり受験算数・国語に集中的に取り組むよりも、パズルをしたり読書をしたりプログラミングをしたり将棋をしたり、さまざまな頭を使う遊びをして知識や思考力の土台を鍛えた子の方が、全体的に長期的に伸びていく傾向があります。
そして、その中で「“勉強”が楽しい」と興味を深めた子は、ますます燃え尽きることなく伸びていきます。
もちろん、ただ成り行きに任せるだけでは、数ある選択肢のうち“勉強”をたまたま選んでくれる可能性はそう高くありません。
だから、そこに導くためには周囲の励ましや、達成感を味わったり褒められて嬉しくなったりする経験が必要です。
そして、ある程度の自由や自己選択の余地も必要です。
確かに、少しはダメだしをされたり、間違いを直されたり、練習に取り組んだりする必要もあります。
でも、この段階ではやりすぎは禁物です。
初期段階であまり厳しくすると、せっかく芽生えた興味をつぶしてしまいます。
一度そうなったら回復は困難で、場合によっては取り返しがつかないこともあります。
私たちも勉強嫌いになってしまってから来た子を迎え入れるととても苦労します。
正直に言えば立て直せなかったことも少なくはありません。
そうなってほしくはないですよね?
6年生の受験直前期と、1~4年生くらいの初学者のときでは、子供への適切な対応の方法は大きく異なります。
本人自身が「成長」を渇望するようになるまでは、楽しくさせることを優先した方が良い。
【最初に厳しくし過ぎると取り返しがつかなくなる】ということを、特に低学年の子の保護者の方は覚えておいてくださいね。
文責:伸学会代表 菊池洋匡
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子供が楽しく遊びながら賢く育つ
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参考
ハイディ・グラント・ハルバーソン『やってのける――意志力を使わずに自分を動かす』大和書房、2013年
アンジェラ・ダックワース『GRIT やりぬく力』ダイヤモンド社、2016年