心理学者が語る子どもの未来を壊す家庭の特徴

こんばんは。伸学会の菊池です。

最近読んだ犯罪心理学者の出口保行教授の著書「犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉」の内容がとても心に刺さったので、今回はそれをシェアしたいと思います。

なぜかというと、子育てをしているすべての親御さんがやってしまいがちな失敗が、ここには詰まっているなと感じたからです。

我が子が罪を犯してしまうというのは、子育てにおいて最も避けたい状況だとは思いますが、決してこれは一部の特殊な家庭で起こっていることではありません。

まったく違う方向に進んでしまった結果ではなく、程度の問題だということです。

犯罪に手を染める一歩手前の非行に走っている子、非行に走るもう一歩手前の小さな問題行動を起こしている子、問題行動の手前のSOSのサインを発している子と、グラデーションのような状態になっています。

例えば、本書の中では、自宅で父親と母親を射殺しようとして殺人未遂で逮捕されたコウジのケースが紹介されていました。

コウジは地元で有名な進学校に通う高校2年生で、小さい頃から勉強ができ、宿題を忘れたことがない優等生だったそうです。

しかし、優等生ゆえに、両親からは期待を押しつけられ、家業である医者を継ぐように強要されて苦しさを感じていました。

そして、地域で一番の進学校に進んだのですが、中学校までと違い成績トップになれないばかりか下位のほうをさまよいました。

優秀な子が集まっている中で自分の実力のなさを突き付けられた思いがしたそうです。

「いい高校に行けたから調子に乗っているのだろう」
「こんなに期待しているのに、わかっていないのか」
両親からなじられ、それまでの不満が怒りへと変わっていきました。

このままでは自分は幸せになれない。両親にいなくなってもらうしかない。

思いつめたコウジは3Dプリンターを使って拳銃を作製し、休日の夜、家族が寝静まった頃に両親の寝室の戸を開けて拳銃を乱射しました。

コウジの育った家庭環境は特殊だと感じますか?

むしろ、ありふれていると感じるのではないでしょうか。

多かれ少なかれ、親は子どもに期待をかけるものだと思います。

良い成績を取ることを求めることもあるでしょう。

期待をしないことが良い事だというわけではありませんし、まして悪い成績を取ること願うのが良いわけはありません。無関心も良くないのです。

では、どの程度の期待のかけ方がちょうど良いのか、どうやって判断すれば良いのでしょうか?

押しつけとの境目は?

決して簡単な判断ではありません。

判断を間違えてしまうご家庭はたくさんあります。

先日、伸学会で働く開成高校出身のT先生が、教育虐待を受けていたという話をYouTubeでしてくれました。
https://youtu.be/On8v7cJTTXc

T先生も、もしかしたら犯罪者になってしまっていたかもしれません。

動画を見ていただくとわかるのですが、「大学受験で合格できなかったら自殺をしようと決意していた」と話をしてくれました。

そうした自殺願望を抱いた人は、他人を巻き添えにして、無理心中を図ろうとする場合もあります。

実際に、2022年1月15日に、大学入学共通テストの会場となっていた東大前で高校2年生の少年が男女3人を刃物で切り付け、重軽傷を負わせるという事件がありました。

逮捕された少年は、東大医学部を目指して勉強をしていました。

しかし、1年ほど前から成績がふるわなくなり、絶望してこの犯行を計画したといいます。

東大前で人を殺害し、自分も死のうと思っていたのです。

こうした事件は、犯罪の実行に至ったから人から知られることとなっただけの氷山の一角です。

背後には、生きづらさ・苦しさを感じながら、犯罪行為の実行数歩手前のところで踏みとどまっている子がたくさんいるはずです。

そして、他者への加害に至らず、そっと自殺をし、世間からは知られないまま消えていく子たちもたくさんいます。

厚生労働省のデータによれば、15歳~19歳の子たちの死因の過半数は自殺です。
事故や病気よりも自殺の方が多いのです。

そして、子どもを自死に追い込んでいるものは、「勉強」と「家庭」の問題が圧倒的に多数派です。
参照:https://www.mhlw.go.jp/content/r4h-2-3.pdf

出口先生は、犯罪に手を染めることも、自殺と地続きであるとおっしゃっています。

事件を起こせば自分は社会的に死ぬことになり、それは一つの自殺であるということです。


そして、あらためてこの本のテーマについて話を戻すと、犯罪・非行や、その手前の問題行動の背景には、どのような家庭で育ったかという問題が大きく関わっているとおっしゃっています。

家庭環境といっても虐待や育児放棄、貧困といったわかりやすい問題だけではありません。

親が良かれと思って子どもに言った言葉が、本書のタイトルにもなっている「呪いの言葉」となって、子どもの未来を壊してしまう場合が多いのです。

親の子育てのほんのちょっとした「不注意」こそが問題なのだと、1万人を超える犯罪者・非行少年の心理分析を行った経験から確信したそうです。

では、どういった「良かれと思って」が子どもの未来を壊すのか?

「勉強しなさい」はその代表的な1つですが、他にも「みんなと仲良く」や「頑張りなさい」など、多くの親御さんたちが子どもに言っていることがたくさんあります。

ぜひ詳しくは本を購入して読んでみていただければと思います。


そして、この記事では、本書の序章に書かれていた、子どもの未来を壊す間違った子育てから軌道修正する方法についてお話をしようと思います。

出口先生は、「正直に言うと、やっかいなのは保護者の方です。子ども自身は、変わることができます。しかし、親が変わることを拒むと、子どもの更生が難しくなるのです。」とおっしゃっています。

これは私の生徒指導の経験とも強く重なることです。

塾でも、「サボって夜の街を徘徊して時間を潰す」といった問題行動から、問題行動とまでは言えない「夜更かし」「宿題をサボる」といったささいなことまで、改善を働きかけていきます。

そのとき、大事になってくるのが家庭環境です。

子どもが問題行動を起こすとき、それは子どもが置かれている環境、特に家庭環境によって引き起こされていることがよくあります。

ですから、家庭環境を変えるためのアドバイスをすることがあります。

「勉強を無理強いするのではなく、やりたいと思えるような工夫をしていきませんか。例えば…」といったことです。

こうしたことをお伝えしたときに、これまでの自分のやり方が悪かったと気づき、変わってくれる親御さんもいます。

そういうご家庭では、子どもの行動の改善や成績アップは難しくありません。

出口先生も、そういう家庭であれば非行少年の更生は難しくないとおっしゃっています。

ところが、同じように伝えても、聞く耳を持たない親もいます。

自分は変わらずに子どもにだけ変わることを求める親、子どもを変えるように塾に求める親もいるんですね。

親御さん自身は「子どものためを思ってちゃんとやってきた」という認識である場合、「それが間違ったやり方である」と言われても受け入れにくいのだと思います。

その気持ちも分かります。

しかし、親が良いと信じていることでも、子ども自身にとってはいい迷惑という場合は多いのです。

そして、最初は小さなボタンの掛け違いだったものが、次第に取り返しのつかない事態になっていく。

これは全ての親が陥る危険性があることです。

有名な教育評論家のおおたとしまささんも、「『あなたのために』は呪いの言葉」とおっしゃっています。

「子どものために」という言葉が出たときには、「それは本当だろうか?」と親が自ら顧みることが必要です。

出口先生は、間違った子育てに走らないためには、「子どものために」と思ってやっていることが、押しつけになっていないか検討する機会を持つことが大事だとおっしゃっていました。

夫婦で、保護者同士で、よく話し合うことです。

自分以外の人の見方・考え方を知ることで、自分の思い込みに気付くことができるかもしれません。

例えば「子供にはいろいろな習い事をさせたい。子どもの能力を伸ばすために、最初のきっかけは親が与えるべき」と考えている人がいるとします。

一方で、「習い事で忙しく、友達と遊ぶ時間が減るのはかわいそうだ。子どもにとって、自由に遊ぶ時間は、知能やコミュニケーション能力を伸ばすために何より大切だ」と考えている人がいるとします。

そうした様々な考え方を知ることで、お互いに「そういう考え方もあるな」と思ってちょうど良いところを見つけられれば最高です。

先ほどお話ししたように「期待のかけすぎ」と「無関心」と、両極端はどちらも良くないということは多いのです。

他の人の考えを知ることは、ちょうど良い場所を探すのにとても役立ちます。

子育てをする上で最悪なのは、夫婦間でこうしたすり合わせができない場合です。

私たち伸学会でも、「保護者の意見がすれ違っているときにどうするか」というのは定期的に議題に上がります。

「お母さんはああ言っているけど、お父さんはこう思うぞ」と子どもに言う家庭はありがちですが、子どもは混乱をします。

子どもにとって大きなストレスとなり、問題行動に繋がります。

出口先生の著書でも、少年院に入った子の保護者に対するアンケートで、子育ての問題として、「夫婦の子育ての方針が一致していなかった」が高い比率で選択されているとありました。

「犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉」https://amzn.to/3WWw1vp より引用

また、もっとも多いのは「子どもに口うるさかった」というもので、約7割の母親がそのように回答しています。

「私は子どものためを思ってこんなにやっているのに、夫は協力してくれない。何もわかっていない」と思い、子どもへの口出しがエスカレートしていく。

自分が指導しなくてはいけないと思い込んでしまう。

これは勉強嫌い・低学力な生徒の親御さんにありがちな特徴として私たちが考えていることとも一致します。

子どもの非行と、勉強嫌い・低学力は、地続きなのだなと痛感します。

夫婦で方針が一致せず、お互いに「相手が悪い」と主張していると、そのしわ寄せは子どもにいくことになります。

問題なのは、「一致しないこと」そのものではありません。

一致させるための話し合いを放棄してしまっていることです。

あらためてですが、「自分は正しい」という思い込みを捨て、子育ての方針を顧みる機会を作るようにしていきましょう。

そうすることが、相手の変化も引き出していくことに繋がります。

人間には、「されたことを返す」という性質があります。

お互いに攻撃し合っていては、意固地になるだけです。

相手の意見を受け入れ、自分が変われば、相手も自分の意見を受け入れ、自分を変えようとします。

ぜひ、良い話し合いの機会を作っていきましょう。

そして、夫婦の中だけでなく、外の人とも話す機会を作って、我が家の方針はこれで大丈夫かなと考えるきっかけにしていってください。


人間は環境によって行動が大きく変わります。

良い環境を整えることができれば、子どもは自然と良い行動をするようになるということです。

そういう力学が働くのです。

「子どもを変えよう」としても失敗しますが、「子どもが良い方向に伸びる環境はどんな環境だろう」と考えると成功する確率がグッと高まります。

良好な親子関係を作り、子どもが心身ともにまっすぐ伸び伸びと育ち、才能も伸ばしていく後押しをしていってあげてくださいね。

それでは。





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