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こんにちは。伸学会代表の菊池です。
先日コンテンツ開発部長の秦先生が、
ブログに「記憶に残すコツは『頭を使うこと』です」と書いていました。
でも、「頭を使おう」と言われても、
何をしたら頭を使ったことになるのかわからないですよね?
だからこそ子供たちは勉強したことをなかなか覚えられなくて困っているわけです。
そこで、今回は「頭を使うというのはこういうことですよ」という記事を、もうすぐ出版される本の内容から抜粋してご紹介しようと思います。
ぜひ普段の勉強に取り入れてみてくださいね。
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目次
頭を使うと覚えられる
先日のことです。生徒の1人が塾に自習に来てテキストを読んでいました。読み終わったというので、読んだところから口頭でいくつか簡単なテストをしたところ、何一つ答えられませんでした。そのときのその子の表情ときたら、ずいぶんと気まずそうでした。
テキストを何度も読んだはずなのに記憶に残っておらず、テストのときに答えられない。あなたにも似たような経験はないでしょうか?
1回読んだら覚えられる子と、何回読んでも覚えられない子は、いったい何が違うのでしょうか?
頭の使い方が記憶の残り方の違いになる
私たちは五感を通じて何か情報を得たときに、それに対して何らかの処理を行います。
このときに、頭をよく使う「深い処理」をしたときほど記憶に残りやすくなることが知られています。
テキストを読むような文字情報の処理であれば、形態的処理→音韻的処理→意味的処理の順に処理が深くなっていき、記憶に残りやすくなります。
これを処理水準説(Craik&Lockhart,1972)と言います。
このことは、例えばこんな実験を行うと確かめることができます。
いくつかの単語のリストを用意して、一つひとつのことに対していろいろな質問に回答させます。
形態的処理であれば、「ダイコン」という単語に対して「漢字ですか? カタカナですか?」のような質問をします。
音韻的処理であれば、「筑紫山地」という単語に対して「つくしさんちですか? ちくしさんちですか?」のように質問します。
意味的処理であれば、「キャベツ」という単語に対して「どちらに典型的にあてはまりますか? 高冷地栽培/促成栽培」のように質問します。
このとき、実験参加者たちには、「出てきた単語を覚えてください」とは言いません。ただ、質問に答えてもらうだけです。
しかし、すべての単語についての質問のあとで、どんな単語が出てきたか思い出すように指示されると、最も思い出せるのが意味的処理、次に音韻的処理、最も思い出せないのが形態的処理をした単語になります。
意識して覚えようとしなくても、深い認知的処理、要するに「頭を使う」ことをすると、自然と記憶に残るのです。
なぜ「蛍光ペンでマーク」はダメ勉強法なのか?
先ほどの実験を踏まえて考えると、テキストに書かれていることを目で「見て」いるだけでは覚えられないというのはよくわかりますね。
よくある「蛍光ペンで塗ったりアンダーラインを引いたりしながら読む」のは成績が上がらないダメな勉強法と言われています。その理由も「大事なところに線を引きながら読みなさい」といった抽象的な指示だと、子どもは多くの場合内容を考えずにテキストの「太字」にマークするだけだからです。太字かどうかという判断は、先ほどの分類でいうと形態的処理であり、浅い処理です。
それに対して、テキストを音読するとなると、音韻的処理になりますから一段深い認知的処理になります。教育学の世界では昔から音読のほうが黙読よりも効果が高いことが知られています。
子どもにテキストを読ませるのであれば、「線を引きながら読ませる」よりは「音読」のほうが効果的です。
そして、最も効果があるのが、あたり前ですが意味を考えながら読むことです。例えば「高知県では促成栽培が盛ん」という記述に対して、「促成栽培で育てている代表的な作物は何だろう?」「なぜここでは促成栽培が盛んなのだろう?」「ほかの地方とは何が違うのだろう?」といったことを考えながら読めば、記憶への残り方は段違いによくなります。
でも、「意味を考えて読みなさい」とお子さんに言っても、それはなかなか伝わりませんよね?「大事なところに線を引きなさい」と言われても「大事なところ」が何かを考えられないのと同じことです。では、どうすればいいのでしょうか。
おすすめは人に教えるつもりで読むこと
小学生の子でもできる比較的簡単な方法は、誰かに教えるつもりで読むということです。
人に教えるという経験は、それ自体強いエピソード記憶になるため、記憶に残りやすくなります。我々のような指導者は、こちらは教えたことをばっちり覚えているのに生徒がすっかり忘れていてがっかりした経験をたくさんしているものです(苦笑)。
これは大人と子どもの差ということではありません。生徒同士に教え合いをさせたときにも、教えた側はしばらく経ってもよく覚えていて、教えられた側はすっかり忘れているということが起こります。教えるという体験にはそれだけ大きな効果があるのですね。
しかし、教えるという体験には相手が必要です。普段勉強しているときに、そう都合よく教える相手を用意することはできませんよね。
そこで、おすすめなのが「教えるつもり」で読むことなのです。
このやり方の効果は実験でも確認されています。
ワシントン大学のジョン・ネストイコらは、学生たちを二つのグループに分けて、それぞれにこう伝えました。一方のグループには「この後テストがあるぞ」、もう一方のグループには「このあとで別の学生にこれを教えてもらうぞ」と。その上でテキストの文章を学習させました。
実際にはすべての学生はテストをされ、誰も他の学生を教えることはしませんでした。
すると、「教えるつもり」で学習したグループのほうが、全体的に内容を正確に思い出せる確率が高くなり、重要なところほど特に記憶に残っていました。
( John F. Nestojko, Nate Kornell, Elizabeth Bjotk Expecting to teach enhances learning and organization of knowledge in free recall of text passages. (2014) )
「大事なところ」を見極めて覚えるためには、「蛍光ペン」よりも「教えるつもり」の方が効果は高そうですね。
前述のように「教える」ことは小学生でもできるわけですから、「教えるつもり」も十分機能するでしょう。ぜひやらせてみてください。
ちなみに私も読書をするときには必ず「これをメルマガやブログのネタにするにはどうしたらよいか?」を考えています。何に困っている人に、解決策として何をどう教えようか、そんなことを考えながら読んでいるのですね。
その結果、私自身の体感としても、やはり自然と役に立つ重要なところが記憶に強く残るようになっていることを感じます。
さらに実際にメルマガなどを書いて学んだことを読者の皆さんに教えると、一層記憶が強くなるわけです。
線を引いたりポストイットを張ったりもしますが、それはあとで探しやすくするための手段に過ぎず、覚えるための手段ではないのです。
さて、話を戻します。
子どもに「教えるつもり」で勉強してもらうのは簡単です。「どんなことが書いてあったか、あとでお母さん(お父さん)に教えてね」と言えばいいのです。
子どもは意気揚々と誇らしげに学んだことを教えてくれるでしょう。小さな子ほど効果的です。
これを子供に続けてもらうために大事なのは「今忙しいの」とか、「そんなの知っているよ」という態度を出さないことですね。
どんなリアクションをすれば、あなたのお子さんは次もまた「お母さん(お父さん)にこれを教えよう」というつもりで本を読んだり、授業を聞いたりしてくれるでしょうか?
子どもが喜ぶリアクションの準備をしておきましょう。
まとめ
形態的処理・音韻的処理・意味的処理について、子どもにわかりやすく教えるためにはなんて説明してあげたらいいでしょうか?
うまく説明できないなと思ったら、「教えるつもり」でこの節をもう一度読み直してみてくださいね。
—(ここまで)—
こちらの内容は、2020年4月15日に出版された
『記憶を科学的に分析してわかった小学生の子の成績に最短で直結する勉強法』
の原稿の1部を抜粋しました。
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