動機付けの基本:子供のやる気をどう上げる?

指導者としての経験を重ねるほどに、「継続は力なり」という言葉の重みを感じます。

それは代表ブログやこのWebサイトのコラムの記事の数にもシンプルに表れています。

いろいろと記事を書いてきましたが、勉強法関連ではやはり「継続法」というジャンルが1番記事の数が多くなっていますね。

 

さて、何かしらの行動を続けるにあたっては、いろいろな原動力があります。

その中で、やりたくないことでもやりぬく力=「意志力」の育成を伸学会では重視しています。

この意志力は、子どもたちにはイメージしやすいように「心の体力」と言って説明しています。

どんなにやる気があっても、ダイエットのために毎日10km走る!と決めたところで体力が無ければ実行できません。

それと同様に、受験のために毎日10時間勉強する!と決めたところで、心の体力が無ければ実行できないのです。

 

しかし、心の体力は鍛えるのに時間がかかります。

目標を達成するための行動を継続するための方法として、心の体力を増やす以外にはどんな方法があるのでしょうか?

伸学会では、その方法として「意欲(やる気)」と「習慣」の2つの力を育てています。

「意欲」があれば、その行動の実行を妨害する状況(誘惑・面倒臭さ)を乗り越えやすくなります。

それが続いて習慣となれば、いっそう妨害に強くなります。

 

ただ、習慣には大きな力がありますが、習慣化するまでにはその行動を繰り返さなければいけません。

そもそも本人が「やりたい」と思わない行動はそこまでたどりつけないことが多いのです。

私たちも学習記録を子供たちに習慣化させるのにたいそう手間がかかっています。。。

そこで、「やる気」を育てることが、まずは大きな課題となるのです。

では、どうすれば子供のやる気を引き出すことができるのでしょうか?

 

「やる気」研究の集大成に、ARCSモデルというものがあります。

ARCSモデルは学習意欲の問題を、注意(Attention)・関連性(Relevance)・自信(Confidence)・満足感(Satisfaction)の四要因に分類することを提案したモデルです。

これは、教育工学者J.M.ケラーが1983年に、心理学における動機付け研究を包括的にとらえた、一種の集大成とも言えるモデルです。


1.注意(Attention)…「面白そうだ」

子供の興味を引き探究心を喚起したり、マンネリを避け、子どもに「面白そうだなあ」と思わせることです。

・なぜだろう、どうしてそうなるのという疑問や驚きを大切にする
・自分のアイディアを積極的に試して確かめてみる
・自分で応用問題を作って、それを解いてみる
・不思議に思ったことをとことん、芋づる式に、調べてみる
・自分とは違ったとらえ方をしている仲間の意見を聞いてみる

のような方法がありますね。


2.関連性(Relevance)…「やりがいがありそうだ」「自分に関係がありそうだ」

学習目標に対して親しみをもたせ、与えられた課題を受身的にこなすのでなく、子供が自分のものとして積極的に取り組めるようにさせることです。

そして、目標に向かうプロセスを楽しめるようにし、学習者に「やりがいがありそうだなあ」と思わせます。

・自分が関心がある得意な分野にあてはめて、わかりやすい例を考えてみる
・説明を自分なりの言葉で(つまりどういうことか)言いかえてみる
・自分にとってやりがいのあるゴールを設定し、それを目指す
・課題自体のやりがいが見つからない場合、それをやりとげることの効果を考える。例えば、評判が上がる、ごほうびがもらえる、感謝される、など。
・自分のペースで勉強を楽しみながら進める
・勉強すること自体を楽しめる方法を考える。例えば友達と一緒に勉強する、競争する、ゲーム感覚で取り組む、誰かに教える、など。

他にどんな方法があるでしょう?


3.自信(Confidence)…「やればできそうだ」

以前別の記事でも書いた「自己効力感」の育て方ですね。
ゴールを明示し、成功の機会を与えましょう。

・始める前に先にゴールを決め、どこに向かって努力するのか意識する
・何ができたらゴールインとするかをはっきり具体的に決める
・現在の自分ができることとできないことを区別し、ゴールとのギャップを確かめる
・当面の目標を「高すぎないけど低すぎない」「頑張ればできそうな」ものに決める
・自分の現在の力にあった目標がうまく立てられるようになるのを目指す
・他人との比較ではなく、過去の自分との比較で進歩を認めるようにする
・「失敗は成功の母」失敗しても大丈夫な練習の機会をつくる
・「千里の道も一歩から」可能性を見きわめながら、着実に小さい成功を重ねていく
・最初はやさしいゴールを決めて、徐々に自信をつけていくようにする
・中間目標をたくさんつくり、どこまでできたかを頻繁にチェックして見通しを持つ
・ある程度自信がついたら、少し背伸びをした、やさしすぎない目標にチャレンジする
・やり方を自分で決めて、「幸運ではなく自分の努力で成功した」といえるようにする
・失敗しても、自分自身を責めたり、「能力がない」「どうせダメだ」などと考えない
・失敗したら、やり方のどこが悪かったかを考え、転んでもただでは起きない
・うまくいった仲間のやり方を参考にして、自分のやり方を点検する
・自分の得意なことや、苦手だったが克服したことを思い起こして、やり方を工夫する
・何をやってもだめという無力感を避けるため、苦手なことより得意なことを考える

ちょっと量が多くなってしまいましたが、伸学会ではこういったことを特に大切にしています。

それらを子供たちにもわかりやすくするために、目標を立てるときの「SMART(かきくけこ)のルール」などを教えています。

 

4.満足感(Satisfaction)…「やってよかった」
学習の結果を無駄に終わらせないようにしましょう。目標に到達した子供をほめて認めることが大切です。公平な評価を行い、「やってよかったなあ」と思わせましょう。

・努力の結果を自分の立てた目標に基づいてすぐにチェックするようにする
・一度身につけたことは、それを使う/生かすチャンスを自分でつくる
・応用問題などに挑戦し、努力の成果を確かめ、それを味わう
・本当に身についたかどうかを確かめるため、だれかに教えてみる
・困難を克服してできるようになった自分に何かプレゼントを考える
・喜びをわかちあえる人に励ましてもらったり、ほめてもらう機会をつくる
・共に戦う仲間を持ち、苦しさを半分に、喜びを2倍にする
・自分自身にウソをつかないように、終始一貫性を保つ
・一度決めたゴールは、やってみる前にあれこれいじらない
・できてあたり前と思わず、できた自分に誇りを持ち、素直に喜ぶ
・ゴールインを喜べない場合、自分の立てた目標が低すぎなかったかチェックする

この「満足感」については、伸学会の指導法の体系の中では「習慣化」に繋がる要素としての位置づけが強いですが、ARCSモデルの中では「やる気」の要因の1つとして分類されています。

私たち大人からの働きかけはもちろん、子供たち自身の自己評価においても、「やってよかった」と思うように導いていきましょう。

 

これまで私たち伸学会が行ってきた、やる気を出させる声かけの方法や評価法なども、これらで分類するとそれぞれどこかに当てはまります。

子供にやる気を持たせたいと思ったとき、この子はどの要因を刺激するのが効果的だろう?と考えると、けっこう簡単にその子に合ったツボが見えてきたりします。

あなた自身は、仕事や家事、子育てに対しての「やる気」の源はどんなものですか?

それは分類するとどこに入りますか?

これから新たな「やる気」の源を作ろうと考えた時、どんなものが増やせそうですか?

まずは自分自身を実験台に考えてみて下さい。

そしてその次に、子供にとって何が原動力になっているか考えてみましょう。

子供に聞いてみたり、一緒に話し合ってみても良いかもしれませんよ。

 

「やる気」にも仕組みがあり、やる気を出させるのも私たち指導者の力の一部だと思っています。

うちのスタッフ達には、「やる気を出せ!」とか「やる気が無いならやめろ!」とか言うよりも、「やる気」を作る手伝いをしていってあげるように指導しています。

 

文責:伸学会代表 菊池洋匡

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鈴木克明『研修設計マニュアル』北大路書房、2015年©