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こんにちは、伸学会の菊池です。
「もし、第一志望に落ちたら、この子は自信を失ってしまうんじゃないか」
中学受験を控えたご家庭の多くが、心の奥でこの不安を抱えていらっしゃると思います。
合格発表で自分の番号がなかったとき、子どもはどんな表情をするだろう。
そのあと、勉強机に向かわなくなってしまうんじゃないか。
「もういいよ」「どうせ自分なんて」と言い出したらどうしよう。
進学先の中学で、ずっと自信のないまま過ごしていくんじゃないか。
――こういう不安は、お子さんを真剣に考えているからこそ湧いてくるものです。
今日お届けするのは、その不安への一つの答えになるような、6年越しのお便りです。
2020年に伸学会を卒業された、森朝都(もり あさと)くんのお父様からいただきました。
(実名での配信の許可をいただいています)
朝都くんは、中学受験で第一志望には届きませんでした。
でもあれから6年、彼がどう歩んでいったのか。
ご家族は何を感じていたのか。
お父さんの文章の力が、私の解説より雄弁です。
中学受験の不合格を怖いと感じているご家庭の方には、ぜひ読んでいただきたい一通です。
こんにちは。
いつも季刊伸学会(※)をありがとうございます。
(※卒業生に定期的に送っているニュースレター)
2020年卒業の森朝都(もり あさと)の父です。
朝都は、この4月から、物理と数学を学びに、慶應義塾大学理工学部に通っています。
伸学会在校中、朝都は素直ながらもあまり器用でなく、宿題も先生に言われてなんとかやる程度。
成績優秀どころか下校中に友達とおにごっこして先生に注意されていましたが、伸学会卒業を目前にして、ようやくエンジンがかかり始めました。
けれど、中学受験は甘くありません。
第一志望には、受かりませんでした。
しかし、全滅でもなく、そのお蔭で本人も「これくらい頑張ると、ここまでは行ける」というベンチマークをつかんだようです。
いま振り返ると、この時、第一志望に受からなかった「悔しさ」と、全滅ではなかった「手応え」の両方を小学生の小さなからだの全身で感じたことが、その後の朝都の飛躍的な成長に大きく影響した決定的な出来事だったと思います。
伸学会卒業の数か月まえから、模試の点数が少しずつ上がり始めていたので、本人は「中学受験には間に合わなかった。
でも、もっとできた。
伸学会では第一志望の合格最低点と自分の模試の点数の差が、あと54点 → 67点 → 49点 → 36点 → 32点と、どんどん縮まった。
自分の成長がわかってうれしかった。
だから、あと3年勉強したらもっとできるようになるから高校受験がしたい」と言いました。
私は、それを聴いて「ああ、朝都はもう大丈夫だ」と感じたのをよく覚えています。
もちろん、それからも苦しい時期はありました。
けれど、朝都の成長には、決して後退しない、力強さがありました。
毎日こつこつやっていたから、自動車の低速ギアのように、速さではないパワーが感じられました。
だから、安心して見守り、朝都を信じてじっと待ち続けることができました。
私が朝都に「勉強しなさい」と言ったことは、ありません。
たぶん、一度もないです。
むしろ、このころの写真を見返してみると、親子でたくさん旅行をしています。
日光に行って、川越に行って、美味しい物をたくさん食べました。
朝都のなかにせっかく芽生えた気持ちを育てるのは、催促ではなく、安心できる幸せな時間だと、お互いに感じていたのだと思います。
朝都は、旅先でいつも分厚い「高校受験案内」を抱えていました。
そこに、いっぱい付箋が貼り付けてあります。
だから親はもう、何も言う必要がないんです。
低速ギアのパワーが、ぐんぐん加速する力に変わっていったのは、地元の公立中学に通ってしばらくしてからのことです。
当時の朝都が、高校受験の第一志望にまさかの慶應義塾を掲げ、こう書き残しています。
「この先の進路では、自分より高いレベルに挑戦していくことを大切にしていきたい。なぜなら、自分より高いレベルに挑戦し、高いレベルの人と接することは、一番、自分自身を伸ばす方法だと思うから」
私は、それに対してこう書きました。
「朝都には自分の走る道が見えているので、特に言うことはありません。これ以上ないくらいに自分を高め続けて下さい。やり方は知っているはずです。簡単なことを実行し続けることの難しさにも気付き始めたと思います。でも、挑み続けることの苦しさは、あの時もっとやれば良かったと悔いる苦しさに比べたら、何てことないです。目標の階段をひとつずつ上がりながら、自分の世界が広がってゆく様子を、新しい景色が次々と見えてくる様子を楽しんで下さい。朝都にはできます。何も心配していません」
そこからが速かったです。
地元中学の残り2年間で、いわゆる学習の成長曲線後半の急カーブをそのまま駆け上がるようにしてトップ集団に入り、高校受験では、慶應義塾、慶應義塾志木、早稲田本庄、立教新座、青稜を5連覇して、慶應義塾志木高等学校を選びました。
自宅から片道90分もかかる志木高をわざわざ選んだのは、試験会場で出会った試験係の在校生たちが輝いて見えたから、豊かな自然に囲まれて、同じ受験を勝ち抜いた仲間とじっくり学びたいから、ということです。
それから3年、無遅刻無欠席の皆勤賞で卒業し、この春、内部推薦で慶應義塾大学に入学しました。
本当は、まったく輝かしくない、けれど、大切な宝物のような思い出がたくさんあります。
最初のうちは、「みんなにちょっと置いてかれてしまったね」と、親子で暗い夜道を歩いているような日々が続きました。
周りのみんなが成功しているように見えました。
みんなは希望の中学に受かったのに「なんで、朝都だけ」と思ったことが何度もあります。
でも、つないだ手はしっかりと温かく、朝都の日々の小さな成長を共に喜び合えたので、私たちはいつも幸せだったと思います。
中学受験で、その時点での志望校に受かることは立派です。
でも、朝都は伸学会でそれ以上に大切なものを学びとりました。
それは、自分が立てた遥かな目標に、最初はゆっくり、でも確かに、自分の足で歩いて行ける、という力です。
伸学会に通ったのは数年でしたが、伸学会の教育哲学が描く学習と成長のありかたが、卒業後に実現し、いまも朝都を支え続けていることをお伝えしたく、また御礼申し上げたく思います。どうもありがとうございます。
ところで、私自身は4月から米国New Jersey州に単身赴任しています。
朝都は大学に通いながら日本で暮らしています。
けれど、まったく心配していません。
これまで彼がやってきたように、自分の頭で考え、正しく行動する力が十分にあるからです。
先生方みなさまと、生徒のみなさん、そしてご家族の、充実した、かけがえのない日々をいつも心より願っております。
2026年4月5日
森 一樹
というメッセージでした。
森さん、ありがとうございました。
朝都くんのことは、私もよく覚えています。
たまたま私と誕生日が同じなので、それもあって特に印象に残っている生徒の一人です。
4年生で初めて受けた日能研の模試は、偏差値30代前半でした。
そこから卒業前までに、偏差値は40代後半まで上がっていきました。
順位で言えば、1000人以上のライバルを追い抜いています。
中学受験の偏差値は相対評価なので、頑張っているだけでは上がりません。
人並み以上の頑張りでようやく上がる指標です。
「宿題も先生に言われてなんとかやる程度」とお父さんはおっしゃっていますが、
やってやりっぱなしとかじゃなく、本当の意味で宿題をちゃんとやるって大変なことだし、
それをちゃんとやっていたからこその着実な上昇でした。
この成長は、本人にとって小さくない手応えだったはずです。
一方で、確かにお父さんの言う通り、まだ余力があったというのも事実だったのでしょう。
第一志望に合格するために、宿題以外にも自分で課題を見つけて取り組み、限界ギリギリまでやっていたわけではなかった。
だからこそ本人の中に、「もっとやれば、もっとできたはずなのに」という感覚が残った。
体験記の中の、朝都くんの「中学受験には間に合わなかった。でも、もっとできた」という言葉。
それは、朝都くん自身が自分の成長の手応えと、まだ残っている伸びしろの両方を、体で感じていた証拠なんだと思います。
第一志望に届かなかった悔しさと、ここまで来られた手応え。
この両方を持って次のステージに向かったから、高校受験からの飛躍があった。
私はいつも、メールマガジンやYouTubeで、
「中学受験はゴールではない。目先の合格以上に大事なのは、その先に生かせる力を育てることだ」
とお伝えしています。
仮に中学受験に間に合わなかったとしても、第一志望に合格できなかったとしても、本当に大事なその力を身につければ、その先の機会で成功を掴むことができる。
6年越しに、そのことを証明してくれました。
「伸学会の教育哲学が描く学習と成長のありかたが、卒業後に実現し、いまも朝都を支え続けている」
そう言ってもらえて、本当に嬉しかったです。
実は、お父さんからこの体験記のお便りをいただいた後、朝都くん本人に連絡を取りました。
そして、伸学会で学生講師として働いてくれることになりました。
この春から毎週顔を合わせるようになりました。
中学受験を通じて、「自ら伸びる力」を身につけた彼が、今は先生側に立って、今度は後輩たちにその力を渡す側になっている。
これ以上に、嬉しいことはありません。
中学受験で第一志望に届かなかった方に、
そして、これから中学受験をする、不合格になったときのことが不安な方にとって、
この手紙が少しでも希望になれば嬉しいです。
誕生日が近くなったら、一緒にご飯でも行ってお祝いして、
お父さんに「元気にやってるんで安心してくださいね」ってメールしようかな。
あ、
彼だけひいきにしてるわけじゃなくて、
学生講師たちはみんな平等にご飯連れていったりしてますからね!
念のため。
それでは~
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