国語の読解力につながる記憶術

こんにちは。伸学会代表の菊池です。

1月下旬に出版第2弾の初稿が上がってきていたのですが、
あわただしかった入試期間をはさんで、
先週校正版を編集さんに戻しました。

ここまでくると書店に並ぶまであと一歩という感じです。
本屋さんに配本されるのは4月13日(月)に仮決定しました。

タイトルは
「『記憶』を科学的に分析してわかった
小学生の子の成績に最短で直結する勉強法 」
です。

今回の本の内容は、
中学受験をしようとする小学生が実践するべき
科学的に正しい学習法をまとめました。

成績アップや合格は
「良い勉強のやり方」を「たくさんやる」ことで手に入ります。

前著が「たくさんやる」ために勉強を好きになる方法でした。

今作は「良い勉強のやり方」について、様々な研究論文なども引用しながら、
小学生におすすめしたい学習法をお伝えします。

お楽しみに!


この記事では、そのうちの一節を抜粋してご紹介します。

内容が気に入ったら、ぜひ本のご購入をお願いします。

理解をすると覚えられる

いきなりですが質問です。
たくさんの情報を覚えるのと、少ない情報を覚えるのと、どちらの方が簡単でしょうか?

ちょっと考えてみてください。



正解は、「たくさんの情報を覚える方が簡単」です。
ちょっと意外ですよね。

確かに、漢字や英単語を100個覚えるのと10個覚えるのとでは、少ない10個の方が簡単です。
これは、漢字や英単語それぞれがバラバラな情報だからです。
もし情報が相互につながっている場合には、情報の数が多ければ多いほど覚えやすくなります。
情報が多いというのは、クイズで答えがわからないときに、ヒントがたくさんもらえるというのと同じことなのです。

私たちの長期記憶は大きな倉庫のようなもので、私たちは記憶をその倉庫の中にしまったり、そこから出してきて使ったりしています。
イメージしてみてください。
大きくて広い倉庫の中で探しやすいのは、小さな箱ですか?大きな箱ですか?

100個の英単語を暗記カードなどでバラバラに覚えるというのは、小さな箱が倉庫の中にバラバラにあるような状態です。
探し出すのに苦労しそうですよね。
しかし、ちょっと長めの例文の中にその100個の英単語がうまく入っているとしたら、それは大きな箱がドンと置いてあるような状態になるわけです。
ある1つの英単語の意味を考えるときにも、それが使われていた前後の文脈から、どんな意味だったか思い出すのは容易になります。

こういったイメージで、覚えたいものにまつわる情報を増やしたり、もともと覚えている情報とつなげたりすることで、記憶は思い出しやすくなります。
これを心理学用語で「精緻化」と言います。
前節にあった「意味を考えると覚えられる(意味的処理)」といった話も、「精緻化」するための方法の1つなのです。

何ができたら「理解した」ことになるの?

前節では、意味を考えるというのは子供にはなかなかハードルが高いということも話しました。
ですが、だからといってあきらめるのはもったいないです。
いずれはできるようにならなければいけないことですし、また3章でお伝えすることですが、国語で問われることの多くはこの「意味の理解」だからです。

そこで、この節では意味を考えて理解するとはどういうことかを説明していきたいと思います。
未就学児や低学年の子にはちょっと難しいですが、声かけを通じて少しずつ教えていってあげてください。

理解その1「構造化」

これから挙げるものをすべて覚えてください。

「ハム」「なす」「にんじん」「キャベツ」「たまねぎ」「鶏肉」「マヨネーズ」「かぼちゃ」「コーン」「ピーマン」

これだけあると、ちょっと覚えきれなさそうですよね。
短期記憶(ワーキングメモリ)のところで、短期記憶で覚えられるのは7±2くらいまでだという話をしました。
9個を覚えられる人でも10%ほどしかいません。
10個は常人の限界を超えています。

ではここで、今日のメニューは「夏野菜のカレー」と「コールスローサラダ」だという情報を付け加えてみたとします。
するとどうでしょう。

カレーに入れる材料として
「鶏肉」「にんじん」「たまねぎ」「かぼちゃ」「なす」「ピーマン」、
コールスローサラダに入れる材料として
「キャベツ」「ハム」「コーン」「マヨネーズ」
を使うんだなと考えると、10個を覚えるのもそれほど難しくなくなりますよね。

こういったことは実験でも確認されています。
心理学者のG.H.Bowerらは、
「プラチナ」「アルミニウム」「青銅」「サファイア」「石灰石」「銀」「銅」「しんちゅう」「ルビー」「花こう岩」…
といった鉱物のリストを実験参加者に覚えてもらいました。

そのときに、1つのグループでは「そのまま覚えてください」と言ってリストを与えました。
もう1つのグループには、下図のような階層構造を与えてやりました。


鉱物の中には金属と石があり、金属の中には貴金属・普通の金属・合金があり、石の中には宝石と普通の石がある。
そして、金属に属するのが「プラチナ」「銀」… といった具合です。

2つのグループを比較したところ、覚えることが増えた2つ目のグループの方が、鉱物名をよく覚えることができました。
階層構造を作って情報を整理した結果、それぞれの情報が「精緻化」され、記憶の倉庫から探しやすくなったものと考えられます。

こういった階層構造の理解をするためには、そもそも「金属とは何か」ということを知っていなければいけません。
その前の食材の例でいえば、「夏野菜のカレーには(多くの場合)ナスとピーマンとカボチャが入る」ということを知っていなければいけないのです。

ときどき「知識と理解のどちらが大事か?」といった議論がされることがありますが、この問いはナンセンスです。
知識を覚えるためには理解が必要で、理解をするためには知識が必要で、どちらもお互いに必要としあうのですね。

子供にこういった階層構造の理解をさせるためには、普段から「貴金属ってどんなものがある?」と具体例(下位語)を聞いてあげたり、「貴金属や宝石や普通の石を全部まとめるとなんていう?」という風に抽象的概念(上位語)を聞いてあげたりすることを繰り返しましょう。

理解その2「因果関係」

先ほどの「構造化」の次に「理解を深める」ために役立つのが「因果関係」です。

チェスや囲碁や将棋のプロは、盤面の様子を一目見ただけで、駒や石の配置を覚えてしまうことが可能です。
彼らの頭の中には、何百という試合の棋譜が丸暗記されています。
これが可能なのは、その盤面に至るまでの手順に意図や原因があるからです。
ハイレベルなプロ同士の戦いでは、駒・石の配置にちゃんとした意図や原因があるため、理解して覚えることができます。

一方、意図や原因がいい加減な素人同士の戦いの盤面や、ましてただランダムに並べただけのものは、プロでも覚えられません。

つまり、「なぜそうなったのか?」がわかることは、記憶を強くするためにとても効果的ということです。

ここで例をあげて考えてみましょう。

「お母さんは手が疲れたと言っている。お兄ちゃんは足が疲れたと言っている。お父さんは目が疲れたと言っている。妹は頭が疲れたと言っている」

これらを覚えてくださいと言われたときに、誰がどこを疲れたと言っているかの組み合わせは時間が経ったら忘れてしまいそうですよね。

ですがここでまた情報を追加してみます。
「お母さんはママさんバレーをしている」「お兄ちゃんはサッカー少年だ」「お父さんはいつも仕事で長時間PCに向き合っている」「妹は勉強家だ」

こういった情報を与えられると、途端に覚えやすくなりませんか?
なぜ「足が疲れた」という結果が起こったのか原因がわかると、それらをまとめて覚えやすくなるのです。

ここでもやはり重要になるのが「知識」です。
「PCで長時間の仕事をすると目が疲れる」とか、「いまどきの大人は仕事でPCを使う機会が多い」というもともとある知識がつながることで、因果関係の理解ができるのです。

先に出した例の「プロの棋士は、打たれた駒や石の意図がわかる」というのも、背景には膨大な知識があるからということはわかりますよね。

子供の勉強の例でも考えてみましょう。
「新潟県は米の生産量が多い。」
なぜなら「新潟県は雪解け水が豊富だからだ。」
なぜなら「新潟県も属する日本海側の地域は冬に雪が多いからだ。」
といった知識がつながると、単に「新潟県は米の生産量が多い」と丸暗記するより覚えやすくなります。
これもやはり「日本海側は冬に雪が多い」とか、「新潟県はここにある」とかいった知識があるからできることです。

子供には日ごろから「なんでそうなったと思う?」ということを考えさせていきましょう。
未就学児の子などは、「なんで?なんで?」と何でも聞いてきますよね。
そういったときに上手に対応すると、好奇心が伸び、「なんで?」を考える習慣がつきます。保護者の方にお願いしたい上手な対応については4章で書きますね。

「理解する」とは、もともとある知識と結び付けること

以上、この節では意味を考えるうえで効果的な枠組みである「階層構造」と「因果関係」についてお伝えしました。

こういった知識を論理的に整理する力はだいたい10歳以降に急激に伸び始めます。
中学受験に向けて勉強するタイミングにぴったりと合致しますね。
それまでの低学年のうちは、脳の働きが「丸暗記向き」なので、この節の内容を完璧に実践しようと思わなくてもまったく構いません。
発育には個人差がありますから、11歳・12歳になっても、無理をさせる必要はありません。
丸暗記が好きなうちは、丸暗記をさせてしまいましょう。
そして、できる範囲で少しずつ論理的に考える頭の使い方を身につけさせていきましょう。
さらに、もともとある知識を整理したり、新たな知識をそこに結び付けたりすることが自分でできるようにしていきましょう。
そうすると、学習した内容がすぐに覚えられるようになっていきますよ。

  

——

こちらの内容は、2020年4月13日(月)に出版される『 小学生の子の成績に最短で直結する勉強法 』の原稿の1部を抜粋しました。

内容に興味を持たれた方は、発売を楽しみにしていてくださいね。

また、前著『「やる気」を科学的に分析してわかった小学生の子が勉強にハマる方法』は、丸ごと1冊子供を勉強好きにさせるための方法について詳述した書です。
勉強を楽しくしてあげたい方は、ぜひ手に取ってみてください。

■成績アップの秘訣をメルマガでも無料で配信しています。

→登録はこちらから←