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こんばんは。伸学会の菊池です。
先日熊本地震についてニュースを見ていて、ある数字に驚きました。
今回の地震では、保険会社が支払う保険金だけでも数千億円規模になると見込まれているそうです。
全ての被害が保険で支払われるわけではないので、経済的損失はその何倍もあるわけです。
そうなると、私が寄付した10万円なんて、まさに焼け石に水ですね。
だからこそ、大事なのは、支援の輪が広がることだと思っています。
私が自分でも寄付をしたことを発信し、またチャリティ企画への参加を呼びかけることで、100人近い方たちが反応をしてくれました。
実際に参加してくださる方がどれだけいるかはわかりませんが、参加費の総額は私個人の寄付額を超えるのは確実です。
また、今回のセミナーのテーマがあまり関心が無いもので、不参加と決めた方も、何か他の企業・団体のチャリティに参加されるかもしれません。
あるいは、親ゼミに参加してくださった方がそれを周囲で話題に出すことで、周囲の人たちも何かしらのチャリティに興味を持つようになるかもしれません。
そうした間接的な効果も、とても大切なことだと思っています。
「寄付を発信するなんて売名だ。」
「黙って寄付すればいいのに。」
そう感じる人もいるかもしれません。
でも私は、そうした誤解や批判を恐れて黙っているよりも、
「一緒に支援しよう。」
と呼びかけて仲間を増やす方が、結果として被災地の力になれると信じています。
1人の10万円よりも、100人の3,000円。
その方が、ずっと大きな支援になります。
だから私は、これからも堂々と発信していこうと思います。
チャリティー親ゼミの募集は、明日から始めます。
ぜひ、一緒に熊本を応援していただけたら嬉しいです。
さて、本日の本題です。
サミットでお茶の水大学の内田伸子先生がお話しされていた「3つのH」。

褒める、励ます、(視野を)広げる。
この3つを大切にする家庭の子どもは伸びる、という話でした。
これまで「褒める」「励ます」について書いてきたので、今日は最後の一つ、視野を広げるについてお話しします。
私は、中学受験を専門にした塾を経営しています。
中学受験を頑張ってほしいと、心から思っています。
でも、その一方で、中学受験は、子どもへの関わり方を間違えると、子どもの視野を「狭める」こともあると感じています。
私立の中高一貫校に通って、難関大学に進学する。
この道を進むと、周りにいる人間が、良くも悪くも似た人ばかりになっていきます。
育ちのいい人、勉強ができる人。
すると、いつのまにか、価値のものさしが一本になっていきます。
テストの点がいいか悪いか。
収入が高いか低いか。
そういう一軸だけで、自分や他人の価値を測るようになり、そのコースから外れた自分を、想像すらできなくなっていくこともあるのです。
これは、私自身がその道を通ってきたからこそ、感じることです。
視野を広げるための勉強が、いつのまにか視野を狭めてしまうんですね。
本来、学ぶことは、その真逆の力を持っています。
学ぶことは、視野を広げます。
その広げ方には、大きく2つあると思っています。
ひとつは、世界の見え方が変わること。
もうひとつは、選べる道が増えることです。
順番にお話ししていきます。
① 世界の見え方が変わるについて
私は、学ぶこと・知識を増やすことは、世界の解像度を上げることだと思っています。
例えば、歴史の背景を知っていると、美術館や博物館が、格段に面白くなる。
お寺や史跡をめぐるのも、知識があるかないかで、まったく違う体験になります。
実は私、高校の修学旅行でお寺をいくつも回ったんですが、当時はまったく楽しめませんでした。
ただの古い建物にしか見えなかったんです。
でも、それから30年。
その間に読んだ歴史小説や、歴史雑誌の知識が、私の中に少しずつ積み重なりました。
そして今、旅先で史跡をめぐるのが、すごく楽しいんです。
同じお寺でも、見える世界がまるで違う。
よく、ドラマのロケ地を訪ねることを比喩的に「聖地巡礼」と言いますよね。
知識を持って本物の史跡を訪ねるのは、より一層本来の意味に近い聖地巡礼なんだと思います。
知識があるから、楽しめる。
これが、解像度が上がるということの、最初の一歩です。
残念ながら「テストに出るから覚える」で終わっている知識は、この力を持ちません。
覚えてはいるけれど、教室の外の世界とつながっていないからです。
地に足がついていない、宙に浮いた知識です。
だから、覚えても世界の見え方は何も変わらないし、テストが終われば消えていく。
知識が世界とつながって、初めて、世界の解像度が上がるんです。
そして、知識が積み重なると、さらに面白いことができるようになります。
先日、社員と旅行に行ったときにこんなことがありました。
昔流行った歌の話になったんです。
今はTikTokで昔の曲が使われたりするので、20代の若いスタッフが、生まれる前の曲を知っていたりするんですよね。
一方で、TikTokに出てこない曲は、私たち40代しか知らない。
そういう「その時代だけ流行っていて、知っている人の世代が特定できる曲」のことを、スタッフが「示準化石」と表現したんです。
良い表現だと思いませんか?
「示準化石」は中学受験の理科で習う知識です。
アンモナイトのように、その化石が出れば、地層の「年代」が特定できる化石のことです。
「この曲を知っている=この世代」を、スタッフは示準化石に例えました。
理科の知識を、まったく別の文脈で、比喩として使いこなしている。
これは、教養がないとできない粋な表現です。
さらに続きがあります。
若いスタッフ同士で「うちの中学ではこの曲が流行ってた」「うちは流行ってなかった」と地域差の話になり、彼らはこう言ったんです。
「じゃあこれは、示相化石だね」
これも中学受験の理科で習います。
サンゴの化石が出れば「暖かく浅い海だった」と分かるように、その化石が出れば、地層ができた「環境」が特定できる化石のことを示相化石と言うんです。
「この曲を知っている」=「この地域に住んでいた」「この学校に通ってた」を、示相化石にたとえた。
世代を当てるのが示準化石、地域を当てるのが示相化石。
2つの概念を正確に使い分けて、言葉遊びをしていたんです。
知識が地に足のついたものになると、世界がこんなに面白く見えるし、こんなに豊かに表現できる。
これが、勉強する価値の、大きな一つだと思うんです。
② 選べる道が増える
続けて、もうひとつの「視野を広げる」は、選択肢の話です。
学力は、将来の選択肢を広げます。
たとえば、医者になりたいとします。
でも、学力がなければ、医学を理解できません。
理解できないまま治療に関わったら、患者さんの命に関わります。
だから「医者になりたい」という夢は、ちゃんとした学力があって初めて、叶えることが許されます。
弁護士も同じです。
法律に精通する土台には、一定の学力が要ります。
本が読めない子、文章が書けない子が、ややこしい法的な書面をやり取りする法律家になれるはずがありません。
学力とは、なりたい自分になるための、土台なんです。
そして、さらにはもっと手前に、大事なことがあります。
それは、「そもそも知らない選択肢は、選びようがない」という事実です。
小さな子どもの目に見えている仕事なんて、ほんの一握りです。
先生、お医者さん、YouTuber、スポーツ選手。
実は世の中は、子どもの目には見えない仕事をしている人の方が圧倒的に多いのです。
その存在を知らなければ、その道を選ぶことは、一生ありません。
学んで世界を知ること自体が、選べる道を増やしているんです。
知ることは、選択肢を生むこと。
これも、立派な「視野を広げる」なんですよね。
ところが、ここでも、例の「一軸化」が起こります。
選択肢を広げる手段だったはずの学力・学歴が、いつのまにか、エリートコースに縛りつけるものに変わる。
「成績がいいから、なんとなく医学部」
「医学部は偏差値が高いから」
手段が、目的になってしまう。
本末転倒です。
偉そうに言っていますが、実は私自身がそうでした。
私はこんな仕事をしていますが、大学は教育学部ではなく法学部です。
その理由は、「併願した大学・学部の中で一番偏差値が高かったから」です。
やりたいことがあったわけじゃない。
ただ、一番上を選んだだけ。
目的化の、典型でした。
でも、私の話には続きがあります。
大学生の時、アルバイトで塾講師という仕事に出会いました。
これが、面白かった。
そして私は、法律家になる道も、一般企業に就職する道も選ばず、そこからドロップアウトしました。
エリートコースから、降りたんです。
「じゃあ、法律を勉強したのは無駄だったの?」と思われるかもしれません。
でも、そうではありません。
学んだことは、全部、今に生きています。
大学で法律を学んだから、大家さんからの家賃の値上げ要求への対応も、労働問題への対応も、契約まわりのことも、法的にちゃんと処理できます。
それだけではありません。
算数・数学が得意だったことも、経営者として財務諸表を読んだり、会計分析のレポートを理解したりが、すんなりできるという形で役に立っています。
学びは、特定の職業に就くためだけのものじゃありません。
レールに乗っても、レールから降りても、自分を助けてくれる土台になります。
学力は、レールに乗るための切符でも、降りるための言い訳でもなく、自分で人生を選ぶための力なんです。
勉強を、点取りゲームで終わらせないこと。
「これが解けたら何点」で終わらせず、
「これを知ると、世界がこう見える」
「これを知ると、こんな道も選べる」
そういう窓として、勉強を子どもに手渡してあげること。
「視野を広げる」というのは、そういうことだと思うんです。
じゃあどうすれば子どもの視野を広げてあげられるのか?
私たち大人が、勉強と世界のつながりを面白がっていると、子どもも「勉強って、世界とつながってるんだ」と気づきます。
そういう気づきを与えられる関わり方が、視野を広げる関わり方なんだと思います。
内田先生の「3つのH」。
褒める、励ます、(視野を)広げる。
3つとも、小手先のテクニックの話じゃないと私は思います。
子どもをよく見て、認め、励まし、そして一緒に世界を面白がる。
結局、全部つながっているんですよね。
子どもの良き伴走者として、時にお手本として、子どもを導いていきましょう。
長くなりましたが、最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
それでは。
p.s.
「この勉強、将来何の役に立つの?」
お子さんに、そう聞かれたことはありませんか?
その時はぜひ、あなたなりの答えを、聞かせてあげてください。
正解はありません。
でも、親が「勉強と世界のつながり」を自分の言葉で語れると、それだけで子どもの視野は、少し広がります。
もし答えに困ったら、今日の記事を思い出してもらえたら嬉しいです。
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